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 素早く手を引いたから気に障ったのかと思いきや、指の腹で触れ直す健助。爪が気になったのかな。トレイも机に置いて、押したり摘んだりというより、両手で持ち上げるように頬に触れてくる。先生はその様子にうんうんと頷いてなぜか満足気だ。 「仲が良くて感心。先生も食事をとってくるので、ほどほどにしてご飯を食べてくださいね」  健助によろしくと伝えて、先生は保健室を出て行った。健助は緋吉先生にも信頼されているんだな。 「ご飯なにもらってきてくれたの?」 「……雑炊。保健室に居るって言ったからだと思う、たぶん」  そんなメニュー無かったと思うけど、別で用意してくれたんだろうか。ありがたい。 「実は昨日空気いっぱい飲んじゃってお腹空いてないから助かる」  無理矢理液体を流し込まれた時にかなり空気も飲んでしまって、たぶんまだお腹に溜まっている。夕方頃空いてくるかもしれないな。  なんて本人は呑気に考えているのに、まだ話していないのでなにがあったか詳細を知らないはずの健助が察して歯を食いしばるのが分かった。それが嫌で、手を伸ばして彼の頬を円を描くようにマッサージして解してみる。 「……侑哉?」 「仕返し。だから健助も触ってて良いよ」 「良いのか?」 「雑炊が冷めるまでならね」  なにが楽しいんだろうと思っていたけど、人の頬を触るのは中々楽しいかもしれない。健助もすっかり顎の力が抜けたみたい。  今先生が居たら、ものすごくにこにこになっていたんだろうな。

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