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倒れ込んだ衝撃であちこち痛めたことがよく分かる。いたた、と思わず洩らしながら健助の方へ体を捻った。そうすると支えようとしてくれたのか中途半端に浮いた彼の手が目に入ったので、なんとなくその指先を握ってみると、まるで今からその甲にキスするみたい、だなんて童話みたいな考えが浮かんで一人で苦笑した。こんなこと考えるぐらいだからたぶん俺は大丈夫。
「健助。握ってて」
「分かった」
包み込むように両手で優しく、でもしっかりと握られた指先から彼の体温が伝わってくる。そのまま健助の方へ引き寄せられて、童話みたいな考えがまた浮かぶ。けれどその手は口元ではなく、額に付けられた。
まるで、祈るような。
「侑哉」
「……うん」
「俺は、お前を傷つけるようなことは、絶対しない」
誓いにも懺悔にも似ているその行為は、とても重くて、とても優しい。十分に伝わっているのに、口にすることで重さが増して、二人を囲んで城壁ができたような気さえした。ここに逃げ込めば、俺は傷つかない。けれどその安心感を得るのに相応しいのかな。
「知ってる」
返答に困って、結局味気も捻りもない言葉が出た。
「絶対だ」
絶対、と自分に言い聞かせるように健助は繰り返す。今回のことで、彼を傷つけてしまったのは俺の方かもしれない。
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