260 / 329

3

 結局断れないまま午後を迎えてしまった。それどころか話題に出るたびに桐嶋は俺と2人3脚に出ると言ってしまっていたらしく、黒板に書く係に任命された今日の日直が、真っ先に2人3脚と書かれた下に俺たちの名前を書いている。 「俺より速い人にした方が良いと思う」 「堰速いじゃん! それに、2人3脚は相性もあるし! オレは堰と走りたい」  食い下がってみたものの、結局押し切られてしまった。相性が良いと思われているのが普通に嬉しくて絆された。  「大丈夫か?」と先生が聞いてくれたのに頷いて返すと、桐嶋が自信満々にガッツポーズを向けて「オレたち優勝!」と早くも勝利宣言をする。 「桐嶋、堰も居るからほどほどにな」 「スポーツ勝負に手抜きは無しだぜコンセン」  気を遣ってくれたみたいだけれど桐嶋には通用しなくて、苦笑しながらの先生の「まあ頑張れ」が慰める時のテンションだ……頑張ります……。でもどうせなら優勝は本当に狙おうと思う。  そして種目は2つ以上が必須参加らしく、花形のリレーは希望者が多かったのもあって止めて、2人3脚の他は枠が余っていた借り物競走にだけ手を挙げた。借り物競走を競技にしてる学校なんて初めてだな。漫画でしか見たことないかも。少し楽しみ。  下限は2つでも上限は特にないのだけど、だからと言ってほとんどに出ようとする桐嶋の体力は底なしかもしれない。黒板に名前を書くのが面倒になってきたのか、3つ目ぐらいから桐、きりしま、きり、と適当になっていた。 「よし、決まったな。来週から組体の練習も始まるからよく食ってよく寝ておけよ」

ともだちにシェアしよう!