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 放課後、健助に桐嶋のことを話したら、「俺なら侑哉を抱えて走れる」と言われたけれど、それはそれで恥ずかしいしそういうことじゃない。俺の嫌がることはしないけど、桐嶋に対抗するか桐嶋から守る(?)ためにならやりかねない。実際健助もこの競技に参加するらしいし、素早く眼鏡を外して渡す練習でもしておいた方がいいかな? 「俺も出るよ。借り物競走」  眼鏡を外して掛けて、と何度かしていると肩に重みが乗った。蕗口だ。すぐに反対側から健助の手が伸びてきて蕗口を押し退ける。この2人、揉めてるようにも見えるけど仲良くなってる気がする。揃うと今みたいに必ず俺を挟んで座るし。窮屈じゃないのかな。  蕗口は例の事件からしばらく学校を休み実家に戻っていて、最近復帰した。少し痩せて髪も短くなり、警戒心が薄れたのかよく甘えてくるようになった。 「クラスは違うけど、頑張ろうね」  2人の肩を軽く叩いてなだめつつ応援すると、同時に頷いたので笑ってしまった。やっぱり仲が良いみたい。 「そう言えば抽象的なお題ってなんなんだろうな」 「お約束なやつだと、好きな人とか? 侑哉なら誰を連れて行く?」  なんとなく言っただけなのにそんな質問をされるなんて予想外で言葉に詰まった。考えている間の2人の視線がなぜか痛い。 「えーっと。残念だけど、お題を変えてもらうかも」  無難な答えにすると健助は項垂れて、蕗口はほっと息を吐いたようだった。

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