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もちろん適当にやるつもりなんてなかったけれど、根津先輩の言葉にはっとした。弱気でいって全力を出せず中途半端に終わるより、実力を出し切って寮長に気持ちよく繋げたい。勝つつもりでいこう!
「はい、全力でいきます」
答えに満足してくれたのか、根津先輩は力強く頷くと残りのハンバーグを頬張った。そのやり取りに野中先輩が嬉しそうににこにこ笑って、さっき自分に向けた親指を天井に向けて「いいね」のポーズを作る。
「おっ良いね! 俺も頑張っちゃお」
俺も、ってことは2年代表は野中先輩だったのか。だから1年の選手が変わったことも知ってたのかな。お互い頑張りましょうの意味で先輩にいいねを返した。
「侑哉、ナス食べた」
野中先輩と応援し合っていると、隣からそっと上がる報告。褒めて欲しいのかな。トレイを見るとこの前は半分俺が食べてあげたけれど、今回はそうしなくても綺麗に無くなっている。
「全部食べたんだ? 偉いよ健助」
先輩の前で頭を撫でるのはどうかと思って、軽く背を叩いた。健助は満足そうだ。
「なになに? 苦手なもの食べたら褒めてくれるシステム? だったら俺もピーマン食べたから褒めて!」
前からずずいっと頭を突き出されて笑ってしまった。野中先輩のこういう気楽さはぜひ見習いたいな。本人が望むならと手を伸ばしたけれど、俺が触れるより先に根津先輩が強めにわしわしとかき回したので、行き場がなくなって引っ込めた。
「ちょ、思ったより激しい……って根津くんかい!」
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