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 躊躇っている俺の腕に、返事を待たず蕗口がハチマキを巻いたのを見て、同じように健助は手首に巻き付けた。うーん、観客の女の子たちの視線が痛い。ここが男子校で良かったな、と思った。そうでなければ、女子生徒の大半を敵に回していた気がする。  健助だってほとんど顔が見えないとは言え、この体格と覗く口元だけでも惹かれる人は居ると思うし。 「……ちょっと厨二病っぽくない?」  包帯ぐるぐる巻きに見えなくもない。前髪と眼鏡で隠した目元が余計に際立つ。嫉妬に混じってくすくす笑い声が聞こえるのはそういうことかと両手を低めに掲げてみたら、蕗口が噴き出した。 「そんなこ……、ない……と思っ……」  全然喋れてない。既視感があると思ったら、萩の寮長に挨拶した時と同じだ。 「大丈夫?」 「大丈夫大丈夫……っふふ」  大丈夫じゃなさそう。諦めて健助の方を見るけれど、蕗口がなににウケているのか分かっていないようで、「似合う」と褒めてくれたものだからついに蕗口は膝から崩れ落ちてしまった。そこまで笑わなくても。  蕗口がようやく落ち着いてきた頃に、借り物競走参加者招集のアナウンスが流れる。 「行こう」  3人とも参加するのでそのまま一緒に入場列に向かうと、その中には葉桜や野中先輩、前川と西岡、ちょうどさっき思い出していた萩の三坂寮長の姿があった。人気が無いと聞いていた割に、知り合いの半分以上は出るらしい。

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