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まだ肩を震わせたままの蕗口が、ちょいちょい、と俺の肩を指先で軽く叩く。
「うちの寮長にその腕掲げて見せてあげてよ」
承諾する前に「三坂寮長!」と呼ばれてしまった。周りの目が気になりつつも三坂寮長の反応も見たかったので、こちらを振り向いたのを確認してからちょっとだけ腕を上げてみた。けれど思ったより反応が鈍いというか、「なに?」と言いたそうな表情を返される。
「ちょっと失礼」
すると蕗口が俺の左手を取って、右手首を掴ませる。何の意味があるのか、じっと手を見るとその瞬間すごい勢いで三坂寮長が下を向いた。見事にツボに入ったらしい。
「寮長は寮対抗以外参加免除されてるのに、あの人は面白そうだからって理由でこれに参加するぐらいだから、今すごい喜んでると思うよ」
よく分からないけど、笑ってもらえたなら良かった。別の場所では被弾した野中先輩が手を叩いて大笑いして担当の先生に怒られていたので、そこはちょっと申し訳なく感じた。後で謝っておこう。
「それでは借り物競走のルールを説明します」
必ず種目に入るリレーやメートル走と違ってそこまでメジャーではないからか、準備の間ルールのアナウンスが入った。
「バッドを使って10回その場で回転してからスタートします。短い直進を走り、目の粗い網をくぐり抜け、吊るされたパンを食べてその中から出てきたメモに従い、無事借り物と共に戻ればゴールです!」
ただメモから連想する物を借りてくるだけというわけでなく、障害物競走の要素もあるらしい。借り物は人の場合もあり、ちゃんとお題と合っているかチェックもされるらしい。
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