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「お題は、気になる人の気になる人でーす!」
じゃーん! と口で効果音までつけている野中先輩と、その他の空気が違いすぎる。この空気を浴びるのは2回目だなあ、と少し遠くを見てしまった。
ところが分かりにくくて言いにくいが正解だったお題に係の人は突然ピンときたみたいで、「ああ!」と声を上げたのですぐ戻された。
「あなたの気になる人が萩の寮長、寮長の気になる人が彼、堰くんですね!」
ちょうどさっき気になる人、のお題で借りられたから確かにそれだと分かりやすいし当たり障りがない感じもする。それぞれの寮長はみんなの憧れ、みたいな感じらしいし。けれど野中先輩はあっさり首を横に振った。
「え、違うけど」
「えっ。じゃあ誰ですか?」
「言ってもいいけど、俺がぼこぼこにされたら責任取ってくれます?」
そのやり取りで俺はなんとなく察して、思わず目が泳ぐ。係の人も明らかに動揺して口籠もった後で「お疲れ様でした!」と強引に締めた。
「オッケーです! あちらへどうぞ!」
そう言った後にさっさと次の人を呼ぶあたり、この人は平和主義だなと思った。たぶん相手が分かったわけではなくて、責任を取るのが嫌だったんだろうな。
「その様子だと、堰くんは分かった?」
「なんとなく……」
誘導に従って2位の旗の後ろに並びながら頷くと、先輩は満足そうに頷き返してあぐらをかいて座り、それから思い出したようにお題のフォローを始める。
「俺の気になる人はそう言う気になるじゃないから! 興味深いの方だから! 根津くんのは知らない!」
名前出ちゃったよ。
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