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そしていくつかの競技の後に、いよいよ寮対抗リレーが始まろうとしていた。これが一番最後の競技だ。待機列から健助を探すけれど見当たらなくて少しがっかり。見守っててほしかったな。
「堰、緊張してるか?」
「少し。でもわくわくもしています」
「頼もしいな」
乗堂寮長がいつものように爽やかに笑う。ちょっとの緊張もしていないように見える。他の寮長もそうだ。さすが貫禄がある。
三坂寮長と目が合うと、俺の腕の短く結び直されたハチマキを見てたぶん「かわいいね」と口パクされた。結び目が蝶々になっているからだと思う。桐嶋から返された後に蕗口がやってくれたんだけれど、その時のことを思い出すとあまり直視できなくなる。
「腕にキスする意味って知ってる?」
彼は巻いたハチマキが解けないか確認しながら突然小声でそんなことを聞いた。
「なんの話?」
「……なんでもない」
聞き返すとなにか言いかけたのに、たぶん違うことを言う。前にもこんなことが合ったような。と気になって、検索してしまったのが間違いだった。
腕にキスをする意味、それは「恋慕」。しかも検索で出てきた同じページに、手首の「欲望」も見つけてしまって、これは本当にたまたまだと分かっているのに恥ずかしくなってしまった。
実際にされたわけではない。ただハチマキがそこに巻かれただけだ。蕗口だって、なんとなく思い出しただけだろう。たぶん気まずくなったから言わなかったんだ、きっとそう。
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