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「う……」
自分のうなり声ではっと目が覚めた。視界がぐにゃぐにゃ歪んで吐き気がせり上がってくる。あの後どうなったんだっけ。さわさわと優しい風を感じて横を向くと、当たり前のように健助が居てくれて、ほっとした。うちわで仰いでくれている。
「大丈夫か?」
「ちょっとまだやばいかも。助けてくれてありがとう」
その後ろは見慣れた背景だ。俺たちの部屋までわざわざ運んでくれたのか。視線を巡らせたのに気づいたのか、健助はなぜか申し訳なさそうに少し下を向いた。
「悪い」
「なに……?」
「運ぶ時ずっとうなってたから」
「え、そうなんだ。記憶がない」
振動が辛かったのかな。今こうして少し話すだけでも吐き気がすごいから。だとしても、他の人の目のない所へ連れて来てくれたのはありがたいことだ。
「ありがとう」
もう一度お礼を言うと、健助はほっとしたように頷いてから、うちわを俺に渡して立ち上がる。
「服を取りに行ってくる。持ってくる余裕なかったから」
「ごめん、よろしくお願いします」
「……落ち着いたら、着替えてくれ」
自分の状態が見れていないからよく分からないけど、言いにくそうに付け足されたその言葉に「分かった」と答えた。
確かになんだか違和感がある。健助が部屋を出た後で、体に掛けられていた薄いブランケットを持ち上げてみて、言ってた意味が本当に分かった。
今俺、穿いてない。
もっと言うとたぶん着ている服も俺のじゃない。健助の服な気がする。
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