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 風呂場で意識を失ったんだから裸を見せたのは仕方ないとしても悪いし、情けなくて思わず顔を覆った。体を動かすと微かに健助の匂いがする。もしかして着ていたのを俺に被せてくれたのかな。 「さすがお兄ちゃん……」  戻ってくるまでにせめて下着を穿こうと体を起こして、目眩に襲われてそのまま溶けるように上半身がベッドから落ちた。き、気持ち悪い……動けない。頭に血が上るし胃も圧迫されて、何より穿いてない下半身が晒されて最低の格好の中、健助が戻ってきた。 「……大丈夫か!」  こんな姿でもからかったり怒ったりせず心配して駆け寄ってくれるのが有り難くて申し訳ない。差し出された腕に掴まって肩を借りると、彼の首筋からは良い匂いがして、触れた鼻先に泡の流し残しか少しぬるつく感じがあった。髪もまだ濡れている。鼓動はいつもより速いし、肌も赤く見える。それでも気にする様子もなく、ベッドに横になる俺にさっとブランケットをかけ直してくれる。  無頓着というわけではないから、俺がしっかり休んで復活すればちゃんと流しに行くはず。 「見苦しいものをお見せしました」 「良くないな、心臓に」 「ごめん、パンツ穿こうと思って……」 「無理するな」  隠そうとして余計に晒してしまったわけだけれど。健助じゃなかったら卒業までネタにされて笑われていたかも。 「服もしばらく借りるね」 「いつでも良い」  優しいな。もう風呂で絶対に油断しないぞ。

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