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第4話 真実

西園寺はソファーに座ると水森を見た 「健は西園寺の家を何処まで知ってる?」 西園寺に聞かれて、水森は知っている事を口にした 「旧財閥の血を与し血族 SHYONを始めとする幾つか複合企業 conglomerate(コングロマリット)の母体…… 西園寺家当主 西園寺勘三郎 そして愛娘  冴子、その息子一臣 婿養子の康三、そして妻の由美子……位にしか存じておりません」 「………それだけ知ってれば充分だ…… 凄いな健は……何故、そんなに詳しい? 俺の担当になるから調べたのか?」 「担当になるからと謂って、そこまでは調べません‥‥‥ ですが、何故知っているか‥‥‥ それを話せば……私の過去を……話さねばならなくなります……」 水森は瞳を伏せて‥‥そう言った 西園寺は水森の顔を上げてニコッと笑った 「………そっか……なら良いや…… ………2年前……じぃちゃんが……」 西園寺が話そうとすると、水森が 「交通事故にあったんですよね? そして半身不随になり意識不明の重体となり……今も目を醒まさない 冴子様も行方は解らない 巷の噂では……亡くなったのでは…… と言われてるんですよね?」と話した 西園寺はそこまで何故知っているのかと‥‥訝んだ 「………何でそんなに詳しいんだ? 義父の‥‥‥差し金か?」 「……まさか……違います……」 「まぁ良いや 義父は祖父も片付けたも同然…… 後は俺を始末すれば……西園寺家の実権が握れると想ってる……」 「……………浅はかな奴だな…… 紅茶を煎れよう……喉が渇いたろ?」 水森は紅茶を淹れに行った そして茶葉を蒸してコップに注ぎ込み西園寺に渡した 西園寺は水森の淹れた紅茶を飲み干した 水森はそれを確かめて口を開いた 「世の中……信じると莫迦を見ると言う言葉は知ってる?」 「………え?何言ってるんだ健……?」 「オレの目を見ろ」 西園寺は水森の目を見た 「眠れ……時は満ちた……」 水森が言うと西園寺は倒れた 健……… 嘘……… 健……… お前………義父さんの手の者だったの? 健…… 健…… 何で? 俺は健の言う事なら何でも聞いたのに? お前は俺を裏切るのか? 意識は地に落ち…… 西園寺は意識を手放した 横たわる西園寺を見て、水森は携帯電話を取り出した 西園寺を見下ろす顔は…… 色もなく悪魔のように残酷に見えた… 西園寺一臣が目を醒ますと…… そこは見知らぬ部屋だった ズシッっと頭が重かった 辺りを見渡すと水森健が覗き込んでいた 西園寺の視線に気付いた水森が 「気が付いた?」と問い掛けた 西園寺は水森に 「………俺……健に……殺されたのか?」と聞いた 水森は爆笑した 「なら此処は地獄だな……」 「………俺……地獄に堕ちたのか?」 「なら天国に逝ける様に頼んでおいてやる」 誰に頼むのかは知らないが西園寺は 「別に良い」と呟いた 水森は冷えた冷たい手で、西園寺の頬を撫でた 西園寺は哀しげに顔を曇らせると 「………健……俺の事……邪魔だった?」と問い掛けた 水森はさっぱり解らず 「何言ってるんだよ…… オレは命の恩人だろ? ほら感謝しまくって良いぞ」 と、胸を張り威張った 「………意識なくなる時…… 健の顔が悪魔みたいで怖かった……」 「…………お前をオレをホビットだとか悪魔だとか……めちゃくそ腹が立つんですけど…」 健は何時もの顔で怒っていた 「お前さ、家の周りにヤバ系の奴等が来てたの知ってる?」 「………え?それ知らなーず…」 「お前を連れて闘えねぇからな 眠らせた……助けてやったんだよオレは!」 「………お前……何者……」 「聞きたいか?」 西園寺は頷いた 「オレの戸籍上の名前は西国院 健……だ 水森はオレの祖母の名前だ……」 「………西国院……?」 「知らねぇか? 10年位前……神と呼ばれた少年が世間を騒がせ…… 半殺しにされて救急搬送された……事件を……あれはオレだ」 西国院 日本(やまとの国)に君臨した卑弥呼の血を与し一族の末裔 それを謳い、信者を獲得していた 彼等の神は生きた御神体  特殊な力を持つ少年だった その神が……瀕死の重傷で運び出されるニュースなら見た 可哀相に…… と想いながら……ニュースを見ていた 西園寺は水森を見た 東栄社で屈託のない顔で笑っていた水森健の顔を…… 「オレの力を親父は利用して、政界の奴等に売ったんだ 力は肌を合わせると強くなるから…… と、無理矢理……オレの意思に関係なく……オレを抱くんだ 男も女も……オレの力欲しさに…… オレを求めるんだ オレはその行為が…… 吐き気がする程に嫌だった だから何度も逃げた…… その度に親父に折檻された 瀕死の重傷を負った日は…… オレは死んでも良いと想ったんだ だから……もう誰も見ないと言った そしたら親父はオレを殺そうとした この体躯の傷は……オレを言いなりにさせる為にいたぶった親父の折檻だ オレを見付けたのは母さんだった 母さんは警察に連絡した 逆鱗に触れた母さんは殺された アイツは殺人犯なのに… 病気を理由に……実刑を逃れやがった オレは祖母に引き取られた あの家で祖母と共に暮らした オレを救い出してくれたのは祖母の友人、飛鳥井源右衛門だった 飛鳥井源右衛門も鬼籍の人になった…… だからオレを自由に出来ると想ったんだろうな…… オレにかけられた封印も……解けた オレは……人の未来が見えるんだよ 触れれば……人の未来が見える…… こんな力があるばかりに…… 母は苦しみの中で死んだ」 水森は西園寺の頭を撫で 「ごめんな……巻き込んだのは俺の方かもな……」と謝った 西園寺は健を強く抱き締めた 「俺から離れるな! 死ぬなら一緒に死のうぜ! 一人で逝くより良いだろ?」 西園寺は底知れない水森の暗闇に気付いていた だが、それに触れたら水森が何処かへ逝きそうで…… 言えなかった だが今は言う 離さないで良いなら言う 西園寺は水森の手を握り締めて離さなかった 「此処は何処?」 西園寺は尋ねた 「この部屋は飛鳥井源右衛門の結界が張られた部屋 何かあったら逃げろと謂われた部屋 この部屋には誰も入っては来れない 例え……飛鳥井源右衛門が死したとしても未来永劫……結界は解けない……と言われた この場所をお前に見せる訳にはいかなかった だから眠らせた 執事の稲村さんに連絡を取って近くまで迎えに来て貰う そしたらお前は安全な所へ行け」 水森は西園寺を護る為にそう言った 「お前は?健はどうするんだ?」 「………俺?俺は………」 水森はそう言い黙った…… 「………俺はお前を置いてなら出ない」 「………一臣……それは駄目だ……」 「なぁお前の目には、俺の未来はどんな風に映ってるんだ? 力が戻ったんなら視えるだろ? 俺の未来に……お前は隣にいないのか?」 水森は首をふった 「………視るのが怖いって初めて想ったんだ…… お前の未来を視たくなかった…」 水森は弱々しく、そう言った 「それは俺を好きだから? 俺を愛したからか?」 水森は西園寺のおでこをピンッと弾いた 「……調子に乗るな……」 「俺を調子付かせて甘やかしたのはお前だろ? ダメって言いながら、お前は俺の言った事を聞かなかった事はない」 西園寺がそう言うと水森は表情を曇らせて 「…………だから嫌なんだよ…… こんな汚いオレなんて… お前に相応しくない……」と呟いた それに対して西園寺は 「俺に相応しい奴って誰? お前は俺が誰かのモノになっても平気なのか? 俺は堪えられない…… お前が他の誰かのモノになるなんて……許せない ましてや愛のないセックスを強要する奴に、お前を渡すなんて皆無だ 愛って奴を教えてくれよ健 愛が解らないのなら……二人で探そうよ お前と二人なら……絶対に探せる なぁ健……俺を好きだと言えよ」と訴えた 夢のような 奇跡が目の前にあった だが信じられなくて水森は 「………好きで良いのか?」と呟いた 西園寺は水森を強く抱き締めて 「抱く前は好きで良い 抱いたなら愛してるに変えさせてやる 俺だけを愛してると言わせてやる 俺もお前だけを愛してると言ってやる だから俺のモノになれよ健……」 と愛の告白をした 強気で…… それでいて弱気 水森を見る瞳は恋い焦がれ……不安に翳っていた 愛しい…… この男の総てが愛しい…… 認めたくなかった だが、その腕に抱かれて眠りたかった 強く抱き締められると…… 西園寺が欲しくなった 欲望なんて……無いに等しかった 誰かを欲しいなんて想わなかった なのに……西園寺は欲しかった そんな自分の欲望に…… 水森は躊躇しつつ…… 西園寺の腕の中に安らぎを求めていた 世話を焼けるなら担当者のままで良い 傍にいられる大義名分があるのなら…… 西園寺一臣の担当者で良い そう思っていた 西園寺は水森を抱き締めた 強く…… 強く…… 抱き締めて…… 腕の中に抱いた 「抱いて良い?」 水森は覚悟の瞳を西園寺に向けた 折檻を受けて傷だらけの体躯を‥‥ 愛してもらえるとは想わないから‥‥ 「………傷だらけのオレの体躯を見て…… 萎えないなら……」 「お前が苦しんで呻くたびに抱き締めた 汗だらけの体躯を拭いてやった お前が苦しまなくて良いのなら……抱きたかった やっと起きてるお前に触れるんだ お前さ、覚悟しとけよ!」 水森の頬にキスを落とした 「………覚悟って?」 「俺だけを見て…… 俺はお前だけを見るから……」 水森の瞳は西園寺を見ていた そらされる事の無い瞳は…… 心の奥深くまで見尽くす程に深い不思議な色をしていた 「お前の瞳に何が映る?」 「一臣しか映ってない……」 「なら俺を見てろよ ずっと生きてる間、俺を見ろ」 水森は何も言わず笑った 本当に嬉しそうな笑いだった 西園寺は水森を組み敷いた 乗り上げる体躯は熱かった 西園寺は執拗な接吻を送りつつ、服の中に手を忍ばせた 服の中に手を忍ばせ、尖った突起を指で摘まんだ 「……アッ……ンッ……」 自分じゃない様な声が出て、水森は口を押さえた 「口、塞がないで…… 声、聞かせてよ」 「……ゃ……こんな声……出した事ない……」 水森は羞恥に体躯を染めて抵抗した 「健……お前と俺は好き合ってる 好きな者同士が愛し合うんだからさ みっともない事も、気持ちいい事も、全部見せてよ 感じたら声を上げて…」 「……さ………触ったら………声……出るの? オレがおかしい訳じゃない?」 水森の総てが愛しい 水森のしてきた行為は‥‥水森の意思を無視して、人格も尊厳も無視して行われていたのが解る 西園寺は水森の心を溶かす様に優しく囁いた 耳朶を舐めながら囁く 「全然おかしくないよ 触られて気持ち良かったら声出して 俺の前でしか見せない健を見せて……」 「………オレ……誰かに触られても気持ち悪くてさ……感情を押し殺して人形になるんだ………」 西園寺は水森の口を人差し指で押さえた 「しっ……俺の手だけ感じて……」 西園寺はそう言い執拗な接吻で水森を翻弄した 指は水森の服の中に潜り込み……乳首を摘まんだ 「……ンッ……んんんっ……ァん……」 「感じろ健……俺を愛せ…」 鎖骨に吸い付いて……跡を残した 「………っ……痛い……」 文句を言うと西園寺は乳首を吸った 真っ赤に腫れ上がるまで吸うと、水森は悶えた こんな感じ初めてだ…と腰をよじる様は……艶を含みすぎて堪らなくさせた 舌は水森の体躯を這いずり回り……翻弄していく 流石に……性器を舐められた時……抵抗した 「……なっ……舐めるな……」 真っ赤になった水森が可愛かった 「嫌か?」 「……嫌とかじゃなく……」 西園寺は性器を口に咥えて吸い上げた 「気持ち……いくない?」 咥えながら話されたら……余計感じる 「……ぁ……気持ち……いい……」 指は秘孔に潜り込み、中を掻き回した 「………そこ……ゃ………」 「痛い?」 「……痛くない……ァん……アァ……」 「健のは、何処だ?」 「……なっ……何が……アァ……ゃ……」 探る指がカリッと引っ掻くと水森の体躯は跳ね上がった 「ココか……」 執拗にソコを撫でられると… 水森は射精した 「………え?………嘘……」 自分の体躯が信じられなかった 「何が?嘘なの?」 「…………誰かに触られてイッたの初めて……」 水森が謂うと西園寺は嬉しそうに笑って水森を抱き締めた 「健が俺を愛してるからだよ 俺も健を愛してるからしてやりたいし感じて欲しい」 「………一臣……」 西園寺は水森に口吻た 「愛してる健」 「………嬉しい……」 水森の体躯が赤く艶めいた 美味しそうな水森の体躯を舐めて、指で確かめて、西園寺は水森の苦痛を癒やすべく……足を開いた 「……脚、持ってて……」 開いた足を持てと西園寺は謂った 水森は訳が解らなくて 「……え?……」と呟いた 西園寺は水森の手を持つと足を持って下げさせた まるでM字開脚くの様な体位に水森は真っ赤になり抵抗しようとした そんな水森の動きを封じて西園寺は 「ほら、ちゃんと持ってて…」と足を持たせた お尻の穴を西園寺に晒して‥‥勃ち上がった股間も西園寺に知られてしまうのだ‥‥ 「………恥ずかしい……」 恥ずかしくて、ついつい内股になる そんな足を開いて西園寺は 「健、俺の事愛してる?」と問い掛けた 水森は羞恥と戦いながらも 「………ぁ……い……してる……」と答えた 「なら堪えてね」 西園寺はそう言うと水森のお尻の穴に顔を近づけた 「うわぁ‥‥ゃ‥‥ダメ‥‥」 抵抗する水森の動きを封じて西園寺はペロペロと秘孔を舐め、指を差し込んだ 水森のお尻の穴は綺麗な色をしていた 性器も使い込んだ様な色じゃなく 童貞だよ……と言われれば信じられる程に淡い色をしていた 秘孔も硬くて誰にもこじ開けられた形跡は感じられなかった ペロペロ舐めると蕾が緩むが…… 水森は何処もかしも小さかった 「………アァッ……ァん……アァん……」 水森は西園寺の指で感じていた 「………健……」 「何?……」 「……ココに俺のを挿れるの……知ってる?」 水森は頷いた 「……初めてじゃなくてゴメンね……」 「……違う……そうじゃない 痛いかも知れないけど……」 「うん……オレは一臣のが欲しい 一臣もオレが欲しければ……」 水森の瞳は潤んでいた 西園寺は水森の手を取ると股間に導いた 「………握って……健……」 手の中のそれは………熱くて硬くて……ドクドク脈打っていた 「………熱い……」 「………欲しい?」 「……欲しいよ……でもオレ……上手く出来るか解らない……」 「健は寝てれば良いよ」 西園寺はそう言うと水森を俯せにして腰を抱いた 四つん這いにして背後から抱き締め…… 水森の双丘を左右に広げた 熱い肉棒を押し当て……擦りながら少しずつ出し挿れした 「健、息を吐いて力を抜いてろ……」 水森は言われた通り……力を抜いた 熱い塊が腸壁を押し分けて挿入って来る…… 水森は息を吐いた 「……カリさえ抜ければ楽だと想う…」 ゆっくりと挿入して、総て納めると一息ついた 西園寺の手付きは男を抱き慣れている風に感じて水森はついつい嫉妬を口にした 「……一臣……男に慣れてる?」 「男は健が初めてだぜ」 「………何か慣れてる……」 「ソープに行くとアナルマッサージとかあるだろ? 俺はやらなかったけど、やってるの間近で見たからな」 「………オレが男は初めて…?…」 「そう。健が初めて…… そして愛する奴と犯るのもお前が初めてだ…… 金で手に入る行為しか知らねぇからな……」 水森は嬉しそうに笑うと 「………一臣……愛してる……」と告げた まさか……言われるとは想わなかった西園寺は下半身に熱が集中するのを感じていた ドクンッと脈打つと、水森の中の肉棒が大きくなった 「………アァッ……ゃ……大きい……」 「健が育ててるんだろ?」 西園寺は水森の中を掻き回し抽挿を始めた 水森は翻弄され……訳が解らなくなった 水森の体内で熱い飛沫が弾け飛ぶと同時に水森も射精した 西園寺は水森を抱き締めたまま、ベッドに倒れ込んだ 水森の中にはまだ西園寺が入っていた 「………一臣……疲れた……」 「俺も……少し休む……」 「なら抜いて……」 「嫌、抜きたくない…… こんなんで根を上げるなよ」 「………え……一回やれば……」 「足らねぇよ!」 「………ァん……ゃ……一臣……ダメ……」 水森の中で西園寺が息を吹き返して硬く太くなって行った 生で出された精液が漏れて気持ち悪かった 西園寺は水森の中から抜くと体躯を起こした 水森をピョイッと抱き上げ上に乗せた 「健、下のお口で食べて」 「……お前はスケベ親父か!」 「後で風呂に入ろうな 泡でヌルヌルにして遊ぼうな!」 何処のスケベ親父よ?と水森は想った 双丘を開かれ秘孔に指を挿れられると……中から精液が流れ出て、水森は西園寺に縋り付いた 「……ゃ……出さないで……」 「この中から溢れる程に出してやるから大丈夫だ健」 水森の腰を抱えて肉棒を食べさせる 貪欲な秘孔が西園寺を食べながら溜飲した 「健、誰かに触らせたら殺すからな」 そんな事今謂われても‥‥ それでも水森は必死に応えてやった 「……一臣にしか触らせない……」 「俺のだからな……」 「……ァん……一臣の……全部……一臣の…」 抱き合い求めあい果てるまで抱き合った 最後の方は意識も朦朧として…… 訳が解らなかった 解るのは……愛してると言う西園寺の言葉だけだった 次の水森が目を醒ますと、湯船の中だった 見上げると西園寺の顔があった 「………一臣……」 「………ゴメン……無理させた……」 「……オレ……気絶した?」 「……抜けなかったから……」 「……オレの体躯で満足した? オレじゃ……満足出来なかった?」 「離せなかった……って言わなかった? 満足したに決まってるじゃん 初めて好きな人を抱いたんだぜ? 良いに決まってるじゃねぇか」 「………一臣……」 水森は西園寺の胸に顔を埋めた 暫し………一時……… この腕のぬくもりに浸らせて下さい…… 愛してるから…… この男を護りたい…… その為なら……こんな命……要らないから… 初めて愛した男だった 初めて愛した存在だった まさか……誰かを愛せる日が来るなんて…… 想いもしなかった 愛してるのだ…… だから……護りたい 「………一臣……愛してる」 「俺も愛してる健」 愛の睦言は再現なく出て来る‥‥ この一時が愛しい だけど体躯は結構ダメージを食らっていた セックスってこんなに疲れるのだと今更ながらに解った 水森は「なんか、体躯がボキボキだ……」とボヤいた 西園寺はケロッとした顔をして 「かなりあっちこっち曲げたからな」 楽しそうに笑っていた 「……しかも口に出せない所がヒリヒリする……」 「………摩耗させる事したからな……」 西園寺の膝の上に乗せられて大切に抱かれていた 夢のようなひととき…… 水森は西園寺の体躯を洗ってやった 何時もの様に髪も洗ってやりお湯に浸かった そして浴室から出ると髪を乾かした 「……何か……服に擦れるだけで……感じたりする……」 服を着た水森が呟いた 吸われ過ぎた乳首が敏感になっていた 西園寺は水森に口吻た 「……美味しそうだったから……」 吸い過ぎた……と西園寺は謝った 甘い時間に‥‥見も心も浸かっていたい だけど許されないのは水森が一番解っていた 水森は西園寺から体躯を離すと覚悟を決めた瞳を西園寺に向けた そしえ「一臣、稲葉さんに電話しろ」と告げた 西園寺には訳が解らなかった 「………え?………」 西園寺は水森に手を伸ばそうとした だが水森はもう甘い顔はしていなかった 「………もう少し……健を抱き締めていたいよ?」 西園寺は訴えた 水森は首を振りながら 「一臣、株主総会を開かせる その時に翁と冴子さんを出す」 と西園寺に告げた 西園寺は「……健……面識あるの?」と問い掛けた 「西国院 健……は面識あるな……」 「………依頼主だった?」 「………西国院 健の最期の仕事だった そしてお前に抱かれて…視た……」 肌を合わせれば‥‥視えると謂った水森の言葉を思い出した 西園寺は水森に 「………俺の横に……お前はいた?」と縋る想いで問い掛けた 水森は西園寺を射抜き 「………一臣…お前はオレが護ってやる」と言葉を投げ掛けた 水森の瞳は覚悟を決めていた 誰にも手を掛けさせない…… 西園寺に触れれば殺す そう決めていた 水森は携帯を取り出すと電話を入れた 「時は満ちました翁」 『………健……か?』 「翁、時は満ちました 今動かねば取り返しの付かぬ事になります」 『………株主総会を開く……』 「見届け人は誰に?」 『………赤蠍商事の円城寺貴正を……』 「………解りました……では連絡を入れます」 水森は電話を切った 西園寺は水森に 「………今の……お祖父様?」と問い掛けた 「もう少し待っててくれ」 水森はそう言い、電話を掛けた 「貴正さんですか? 西国院 健です」 水森からの突然の電話に円城寺貴正は驚いた声で問い掛けた 『………健!本当に健か? 何処に行ってた? 康太に聞いたら別人になってるから探してやるな……と言われた ずっと……お前が心配だった』 心配そうな声が聞こえる 「………貴正さん、お願いがあります」 水森に謂われ、円城寺は 『聞ける事なら聞いてやろう』と答えた 愛する妹の落し胤だった 円城寺の妹は愛する人との婚姻を反対され、駆け落ち同然で家を飛び出し、消息不明となっていた 次に連絡が来た時は‥‥‥妹の死亡通知だった その時初めて妹には子供がいると解った 円城寺が保護しようとするより早く、飛鳥井源右衛門が動いたと聞き、円城寺は動けずにいたのだった 水森は円城寺に 「西園寺グループって知ってます?」と問い掛けた 『知ってる………が、今の腐ったコングロマリットには興味もない』 「翁が建て直すそうです」 『………と言うと……時は満ちたか? お前の封印も……解けたのだな……』 円城寺は水森の役目を飛鳥井源右衛門から聞き知っていた 時が満ちたら水森は連絡を取るだろう‥‥‥とだけ知らされ電話番号を教えたのだった 「西園寺グループの本社に来てもらえませんか? 見届け人として出席して下さい!」 『……良かろう! お前の最期の仕事……見届けよう!』 「………母さんの望みは平凡な生活を…… だった オレは母さんの意志を継いで……平凡な生活を手に入れた 幾ら望まれようとも…… オレは今度こそ西国院を捨てる……」 『………妹は何時もお前を見守っている お前の幸せを願っている 私も……お前の幸せを願っている それだけは忘れるな……』 「はい。株主総会の日時が決まったら連絡を入れます」 水森はそう言い電話を切った 西園寺は水森を抱き締めようとした その手を水森は止めた 「あと一人……電話しねぇと駄目なんだよ 少し待っててくれ」 水森はそう言い西園寺に背を向けた 「西国院 健です そろそろ出て来て貰えませんか?」 水森の声に驚いた声が響いた 『……健!あんた生きてたの!』 何ともな謂われように水森は苦笑した 「生きてました…見舞いにも来てくれなかった癖に……」 『だって私は身を隠してた身だからな… そう易々と出ては行けまいて!』  「貴方の愛する一臣が殺される前に…… 出て来てカタを付けてくれませんか?」 『………面倒は嫌なのよ……』 「会社は一臣の後に生まれた子供 今年20歳になる洋介がなる 貴方は出て来て洋介を据えて下さい」 『………健は?どうなるの? 還るの……?西国院に……』 電話の相手は西園寺一臣の母の冴子だった 冴子は自分の心配よりも水森の心配をしていた 「普通に生活して、普通の幸せを手に入れて……と言うのが母さんの願いなので、オレは今後も普通の生活をするつもりです!」 『………そうなの…… 愛する人は……出来た?』 「………ええ、愛する人は出来ました 俺はそれだけで産まれて来て良かったと想いました 冴子さん、西国院 健の最期の仕事をしたいと想います それには冴子さん、貴方が必要なんです」 『………健……解ったわ…… 総て貴方の謂う通りに動くわ』 「お願いします、それで俺は‥‥終われます あ、そうだ、貴方に逢わせたい人がいるんです!」 水森はそう言い携帯を西園寺に渡した 「一臣、電話変わって……」 「……え?誰?……」 「出れば解るよ」 西園寺は水森から渡された携帯を受け取り電話に出た 「………もしもし……」 『………誰?』 「………俺は西園寺一臣 貴方は誰ですか?」 冴子は何故今、西園寺一臣が電話に出るのか解らなかった 『一臣……嘘……何故健と? 私は西園寺冴子、貴方の母親よ』 「………え?母さんって健と知り合いだったんだ……」 『西国院 健の最期の仕事…… それが私と翁が依頼した西園寺家の未来……時が満ちたようね』 「………何か解らないけど健を傷付けたら容赦しない!」 『………一臣……がそんな風に謂うの珍しいわね』 「そんなに俺の事を知らない癖に‥‥」 拗ねた様な口癖は夫に‥‥嫌、一臣の父に似ていた 冴子はこんなにも似ている我が子の存在に胸が締め付けられた 『ごめんね一臣‥‥放りっぱなしにして‥‥』 「別に理由があったんだろ? 今は健がいてくれるから‥‥そう想える別に良い‥‥」 西園寺の言葉に水森への愛が感じられて冴子は離れている時間は埋められると感じていた 『………変わったわね…一臣 稲村から聞いている貴方ではないわね』 「変わらないと健に蹴り飛ばされ‥‥痛いって健!」 西園寺が痛いと言うと、余計な事を謂うな!と水森の声がした 冴子は笑って二人の仲を感じ取っていた 『一臣、健に変わって貰える?』 西園寺は水森に携帯を差し出した 『健、株主総会をやるの?』 「見届け人に円城寺貴正さんに来て戴くつもりです 翁も出席します!」 『………翁……そう……お父様も出るのね と言う事は……一臣を亡き者にしようとした?』 「ええ。私利私欲の塊が手ぐすね引いて待ってます 飛鳥井家 現真贋には……源右衛門に変わって力を貸して貰うつもりだ この家に念書がある それを持って飛鳥井へ行く……」 『………飛鳥井家真贋には私から連絡を入れておきます 貴方は下手に出ない方が良い…… 一臣を宜しくね健…』 「……冴子さん……」 『久しぶりにあの子の声が聞けた…… 閉鎖した世界に閉じ込めた……あの子が……こんなにもあの人に似て育っていた』 「カタを付けてくれませんか?」 『時が満ちたのなら…… 在るべきカタチに戻るだけ…… 健…貴方が護りたい存在を私も護る』 「明後日、午後一時から株主総会を開きます! 会場は横浜アリーナで! 芸能人を呼んで大々的になるとニュースに流します そして警護という要請で警察の人間を配置します 公然の前で西園寺康三を引きずり下ろしてやるつもりです 不正の書類は既に手に入れました 後は……貴方と翁が姿を現せば……引きずり下ろせる……」 『………健……無茶はダメよ……』 「西国院 健の最期の仕事です」 覚悟を決めた声が響く 水森は命を懸けているのだと……決意の深さを知る 冴子と電話を切ると水森はPCを取り出した 西園寺は何故母と知り合いなのか、解らず水森に問い質した 「健……聞かせて……」 「オレは西国院と言う神として祭り上げられた存在だと教えたよな?」 「………うん……聞いた」 「オレは人の未来を見る……」 「………母さんか……翁と寝たの?」 西園寺はそっちの心配をしていた 「あのお二方とは寝てない 依頼を受けた時には、時は満ちてなかった 時が満ちたら………オレは動くと約束した」 「………健の役割は何なの……」 「冴子さんは『西園寺は何処へ行くの?』と問い掛けた 俺は……『貴方は殺されるから身を隠しなさい』と言った 翁にも『事故に遭う前に事故を装って安全な場所に逃げ込みなさい』と提言した 翁と冴子さんは俺の提言を聞き届けた そして残った………西園寺一臣を抹殺しようと動き出した時……歯車が動き出す様に呪文を唱えた約束した そして時は満ちたら総てが動き出す……と、予言した 予言をして直ぐに、俺は殺されかけ飛鳥井源右衛門の手により救出され封印された 源右衛門は俺に謂った 時が満ちるまで、祖母の願い通り平安の時間を送れ!‥‥と。 オレは普通の生活をする為に祖母に引き取られた 日中は忘れて生きて行くんだが…… 眠ると悪夢に魘された 男も女もオレの体躯を求め……予言を求めた 拒めば父親から折檻を受け体躯を切り刻まれた 視れないお前など生きてる価値はない……とナイフで刻まれた この痛みに堪えきれないのなら、お前は視るしか出来ないのだ……と。 その頃のオレは逃げ出さない様に、脚の腱も切られてて自由に歩けなかった 母さんが自分の命と引き替えに助け出してくれたんだ…… 救急車で運ばれニュースになった後、リハビリに5年の年月を費やした 遅れた分を取り戻す為に勉強した 大学を卒業して東栄社に入社した頃にやっと普通の生活が出来る様になったんだ だが……飛鳥井源右衛門が崩御した…… オレの封印は……解かれた ……少し前に力は戻りつつあった 時は満ちたからか……約束の時までには、オレの力は元に戻る予定だった 封印も……時が満ちるまで……だからな 時は満ちたんだ一臣……」 「………健……俺を愛してる?」 「愛してるから………命にかえても護ってやる……」 「………健………俺を離すな……」 「………君にはオレの原稿の取り立てを見せてませんでしたね オレの取り立ては脇坂編集長よりも厳しく……瀬尾先生は泣きながら脇坂の方がマシだと言いました 香村先生はリトルデビルと呼んでました 小さい癖に……血も涙もない……と。 オレは西園寺先生にも原稿の取り立てをせねばなりません! 原稿の取り立てに愛は介入しません そこの所、覚えておいて下さいね!」 水森の言い種に西園寺は驚きの声をあげた 「………え……脇坂の方がまだマシなの?」 「遅いですよ! 先生の担当者はオレです 面倒事を片づけて、さっさと原稿を上げて貰わないといけませんからね!」 「………少しは……甘やかして健……」 「それは出来ません」 水森はそう言い笑った 「……俺……愛されてない?」 「愛してますよ でも、それとこれは別です」 水森の笑顔は元気な悪ガキの様な笑顔だった 「………なら俺、原稿の中心で愛を叫ぶよ」 西園寺は水森に訴えた なのに水森は 「何だよ?それは」と笑っていた 「健!愛してる!って叫んでやる」 「それは嬉しいな………なんて言わねぇぞ!」 「素直じゃない……」 「………健……なんて名前を出すな…… ゲイだと想われるだろ?」 「構わない 俺は別に男だから健が好きになった訳じゃない」 水森は西園寺を抱き締めた 「……お前を愛してるよ、西園寺一臣」 「………健……」 「オレを抱きたいか?」 「決まってるだろ?」 「なら生きて逢おうぜ!」 「……健……何言ってる……」 「もうじき迎えが来る そしたら、お前は着いていけ」 「……嫌だ……健も一緒に……」 「それは無理…」 「なら動かない!」 西園寺は水森を抱き締めて……石になった 「………一臣……」 「俺の面倒見るって言った癖に……」 離す気は皆無な西園寺に水森は降参するしかなかった 「………一臣……巻き込んじゃうかも?」 「お前が親父に逢っても良いと想ったら、俺も着いて行ってやる」 「………お前って……どうしてこんなにもいい男なんだよ 俺を惚れさせてどうするんだよ!」 「もっと俺に惚れろ! 離れたら死んじゃう程に惚れろ」 「もうとっくにお前と離れたら死んじまうよ! あぁ!クソ……こんなに惚れさせやがって!」 西園寺は嬉しそうに水森に口吻た 「健、俺の未来にお前はいた?」 西園寺の問いに水森は答えなかった 「……一臣、俺はその未来を手に入れに行く!」 未来は自分で手に入れろ!と水森は瞳を向けた 用意された未来なんてクソ食らえだ!と 西園寺は笑った 「健が傍にいない未来なら、健を引き摺っても離さなきゃ良いだけだもんな!」 なんと謂う良い草 水森は笑った 話が決まったなら善は急げ 「うし!なら行くぜ健!」 「何処へ?」 「着いて来い! 俺を離すな!」 水森は西園寺に抱き着いた 西園寺と水森はマンションから消えた 迎えに来た稲村がどれだけ探しても…… 西園寺と水森は見付からなかった 稲村は脇坂の所へ居場所を知らないか…… と尋ねに行ったが 「水森は休暇中です」と取り合わなかった 稲村は何処かへ連絡を入れた

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