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「何もないけど、どうぞ」  単身用の普通のマンション。  入ると、キッチン、リビング、それからもう1室――たぶん寝室。  ものが少なくて、本棚には教材や辞書が並んでいて……先生の部屋だなって感じがした。  緊張気味にソファに腰かけていると、アイスティーをローテーブルに置いてくれた。 「話したいんだけど、その前に。あはは」  あきは眉根を寄せて笑ったあと、俺のあごをつかんでキスしてきた。 「んっ」  突然過ぎてびっくりする。  髪に手を差し込まれて、あいた片手では、腰のあたりを抱き寄せられている。  俺も自然と、あきの胴体にしがみつくように手を回した。 「……っはぁ」  シチュエーションに興奮してしまって、うまく息ができない。  あきの呼吸も少し弾んでいて、顔の角度を何度も変えてはキスをし、服の上から、体のあちこちをなでる。 「あき、……ぁ」  あごをそらすと、ガラ空きの首筋にキスされ、そのまま耳を甘噛みされた。  このままされちゃうのかな、でもいつものあきならこの辺でやめて、本題に入るよね。  なんてぼんやり考えていたら、あきの手がするりとシャツのなかに入ってきた。 「え、……っ、あき?」 「だめ?」  甘えるような声で聞かれて、ダメなんて言えるはずがない。  というか、俺の身体は正直で、とっくのとうに『して』って主張している。 「ん……いいの?」 「あした深澄のこと見ても欲求不満みたいにならないように、ね?」  前にあきは、自分のことを『実はズルい大人』と言っていたことがある。  もしかしたら、家に呼んだ時点でそのつもりだったのかも。 「ぁ……、はぁ……っ…」  あきは手際よく服をはぎ取りながらも、くちびるで俺の胸を愛撫し続けていた。  エッチなことをされながら脱がされていると思うと、この上なく興奮した。 「最後までしちゃうと、あした歩き回るのが大変だから、さわりっこだけね」 「ん……」  あきはよいしょと俺を横抱きにし、寝室のベッドへ放り投げた。  ベルトをゆるめ、スラックスと下着、靴下を脱ぐと、ワイシャツ1枚の姿でおおいかぶさってきた。  とんでもなくエッチな光景。  さわりっこ、と言いつつこの体勢では俺はあきのものに触れることができなくて、ひたすらあきに、全身を触られたりキスされたりしていた。 「……んぁ、はぁ、……はぁっ、ン…」  何も考えられなくなってくる。 「深澄、可愛い。もっと声聞かせて?」 「んん、……ンッ」  いくらマンションで壁が厚いとはいえ、男の俺の声が聞こえたら、まずい。  手の甲で口を押さえて、必死に声を殺す。  でも、そんなのはおかまいなしとばかりに、あきはしつこく俺の乳首やペニスを攻めてくる。 「んっ……はぁ、ん、ん……ッ、ゃだ、もぅ」  小声で、少し泣きそうになりながら訴える。 「イッちゃいそう?」  こくこくとうなずく。 「いいよ」  ペニスを扱く手が速まり、乳首もくりくりとつまみ上げてくる。 「……はぁ、は、ぁっ……はあ、ん、…ぁ、いく」 もう片方の乳首を、ちゅうっと吸われた。 「ぁ、もぉ、……ぁ、イク、……っ……!……ッ」  ドクドクと、あきの手の中へ吐き出す。  あきは軽く手を拭ったあと、ティッシュの横にあった既視感のあるボトルを手に取り、にゅるにゅると中身を出した。  そして、俺の太ももの間に塗りつける。 「足閉じて、抱えてくれる?」 「ん」  言われたとおりにすると、あきがおおいかぶさってきて……太ももの間に、あきの固いペニスがぬっと差し込まれた。 「……っ」  あきは何も言わないまま俺にキスをして、そして腰を動かし始めた。  ぬちぬちと音を立てながら、俺の足の間をあきのそれが出たり入ったりしている。  あきが頬を紅潮させていて、本当にセックスしているみたいだ。  抱える腕に力を入れてみると、太ももの間が狭くなって、より一層いやらしい音が室内に響いた。 「……っ……」  あきは息を詰めているけど、漏れる吐息が本当に気持ち良さそう。  徐々に律動が速まり、あきの呼吸も荒くなってゆく。 「深澄、イクね」 「うん」  肌と肌が、パンパンと当たる音。あきの熱い吐息。 「…ぅぁっ、……ッ、……!」  お腹の上に、温かいものが注がれた。  シャワーを借りてざっと体を洗い流し、出てくると、いつもの優しいあきが、ソファの上でニコニコしていた。 「相談に来た生徒を食べてしまった悪いオオカミ先生は、僕です」 「何それ」  ちょっと笑いながら、横に腰掛ける。  ローテーブルの上には、しおり。 「初日の都庁と国会議事堂は、全体行動だから問題ないね。僕は後ろの方にくっついてるけど、深澄は真ん中らへんだもんね」 「うん」  頭をなでられる。 「夕食は、1番遠い席にしてもらった」  席一覧の『教員』と書かれている部分のひとつを、指でとんとんと叩いた。 「ありがとう」 「2日目、自由行動はどこに行くの?」 「原宿。女子がタピオカ飲みたいって」  男は言いなりだ。 「あらら。僕、原宿担当だ。原宿を選んだ子が多くて、先生を何人か配置してるの」 「あきはどこ?」 「神宮前交差点。深澄は?」 「竹下通りでプリクラ撮ってカラフルわたがし食べて、明治通りのタピオカ屋に行って、ファッションビルいくつか見るって」  女子から送られてきた地図のスクショを見せた。 「会うことになりそうだね」  あきは、困ったように笑う。  と、ここで俺は、ひとつの疑問が浮かんだ。 「ちなみにさ。先生たちは、私服?」 「ん? そうだけど」 「……そっか」  東京の大きな交差点で何時間も突っ立ってて、逆ナンパされたりしないかと心配になる。 「夕食前のディスカッションは、僕は1~3班担当なので、問題なし」 「うん」 「それで……」  あきは、言いにくそうに切り出した。 「夕食後の自由時間が問題です」 「問題? なに?」  あきは、目線をそらしつつ首筋をぽりぽりかいた。 「僕、修学旅行の引率は3回目なんだけど、3回とも……その……女子生徒が……」 「うん、大丈夫。言わなくても分かった」  最後の夜だ。カップルは隠れていちゃつくだろうし、片思いの子は告白する。  三船先生に恋人がいるのは周知の事実だけど、密かに画策している子や、雰囲気に当てられて勢いで告白しようとする子もいるかも知れない。 「それで、色々考えて……卓球でもしてようかなと思うから、良かったら来て?」 「え?」  目を見開いた。 「いいの?」  あきは、はにかんで言った。 「行事とはいえ、せっかく旅行だし。なんにも思い出がないのは寂しいじゃない? ふたりきりで居るのは無理だけど、みんなでワイワイならいいかな、って」  そう言いながら、顔にくちびるを寄せてくる。 「うん、部屋のみんなで行くよ」 「うれしい」  間近でみると、なんだか急にドキドキしてしまった。  みんなが大好きな三船先生を、修学旅行前日に、独り占めしてるなんて。

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