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 時間をかけて、中をならされる。  火がついたまま中途半端に放って置かれたペニスはガチガチに主張していて、あきに「先走り、すごいね」なんて指摘をされた。  恥ずかしいのに気持ち良くて、上ずった声が漏れてしまう。  パーカーも脱がされて裸になると、あきもいつの間にか全部脱いでいて、素肌をくっつけながら、深いキスをしてきた。 「ん、ん……っはぁ、あ」  指は攻めることをやめず、3本目が入った。 「ぁあっ」  俺の良いところに、何度も当ててくる。 「……ん、はぁ、あき、あ、…はぁ」 「なあに?」 「ん……ぁ、やだ、ぁ、声出ちゃ……」 「聞きたいんだって」  好き勝手にかき回されて、声が止まらない。 「んん、ん……っ、んぁ、はあっ、も……」  腰がひとりでに動く。あきが欲しくて仕方がない。 「挿れていい?」  がくがくとうなずく。  指を抜いたあきは、両手を俺の顔の横について、見下ろした。 「ね、フェラしてくれる? それでゴムつけてよ」 「うん」  抱きかかえるように起こされると、あきは ひざ立ちになった。  俺はぺたんと座ったまま、あきのものを口に含む。  あきは俺の髪をそっとなでた。  ぎこちなく頭を前後させると、あきは俺の頭を両手で軽く押さえて、ゆるゆると腰を振ってきた。 「んん、ンッ……っ」  ちょっと苦しくて、犯されてるみたい。  なのに頭をなでられて、優しくて、でも喉が苦しい。 「……んっ、はぁ、ぁ、んっんぐ……」 「深澄、気持ちいい」  あきの息は少し弾んでいて、濡れた瞳で見下ろされると、たまらなかった。 「もういいよ」  あきは手をそっと離し、口を解放してくれた。  コンドームを手渡される。 「どうしたらいいか分かんない」 「貸して」  手を添えてもらって、くるりとはめる。 「これからは自分でするんだよ? 分かった?」 「うん」  あきは優しく俺の頭をなでて、押し倒した。 「挿れるね」  あきが先端を押し当てると、ならされた中へ質量のあるものがぐいぐいと入ってきた。 「ん……っ」  しがみつくように、背中に手を回す。  あきは、しばらくゆるゆると動いて中を広げていたと思ったら、突然手加減なく、手前の良いところをガンガン突いてきた。 「……あっ、んんっ、はぁ……ぁあ、はぁっ……ッ」 「ぅあ……、深澄……っ」 「ん、……ん、はぁ、あぁっ、あ、やだ……はげし……ンッ」  やだと口では言いつつ中はめちゃくちゃに気持ち良くて、何度もビクついているから、もっとして欲しいのはバレバレだと思う。 「あん、っはぁ、……ぁ、んッ」  あきの腰つきがどんどん大胆になって、奥へ奥へと突いてくる。 「……んっ、はぁ、……ッ、ぁ、おく、んンッ」 「奥……なに?」 「ぁあ、奥きもちい……、あぁっ」  体がビクビクしてしまう。 「あー……そんなエロい顔して煽ったらダメだって」  そう言いながら、緩急をつけてガンガンと突き上げられると、気持ち良さに涙がこぼれてくる。 「はぁ、んっ、はぁっ……ああっ、や、ぁあっ」 「泣いちゃうくらい気持ちいい?」 「ん……きもちいい……」 「かわいい」  ガンッとひと突きされた。 「ひぁあッ」  あごが跳ね上がる。  もうひと突き。 「ぁああっ」 「これ良いの?」  繰り返されると、訳が分からなくなって、泣いているのか悦んでいるのか、めちゃくちゃになった。 「ぁあっ、ん、はぁっ、ああぁッ」  触られてもいないのに、射精感が高まる。 「イッちゃいそう?」 「んーッ、んぁっ、はあ、ぁ……ッ」  あきは、激しく突きながら体をぐっと倒し、俺の耳元でささやいた。 「深澄はエッチな子だね」 「ぁあああああッ!」  ドッと熱が吐き出された。目を見開いて、背を反らす。 「…………ッ、やっば…」  イッている間にも、あきは奥を何度も突き上げていて、目の前がチカチカした。 「ぁ、ああ……ぁ……」  あきが体を揺するのに合わせて、不明瞭なか細い声が漏れるだけ。 「あー……深澄の中、」  気持ちよさそうに味わったあと、耳元でささやいた。 「……イキそ、もう終わっていい?」 「ん、……ぁき、……っ」  もう分からない、あきが気持ち良ければ何でもいい。  力の入らない腕で、ぎゅっと抱きしめる。 「いく」  小さな声でつぶやいたあきは、最奥を突いて、力いっぱい俺を抱きしめた。  無理をさせたと平謝りするあきは、なんだか可愛かった。 「あきは、セックスのときに少し優しくなくなる」 「ごめんね。そんなつもりないのに、可愛いって思ったら止められなくて」 「んーん。優しくないあきを見られるのなんて、この世で俺だけでしょ? なんか良い」  拍子抜けしたような顔をしたあきは、ちょっと固まったあと、眉根を寄せて笑った。 「深澄はなんでも許してくれるから、可愛いけどかっこいい」 「いつも言うそれ、なに? 可愛いけどかっこいいって」 「そのまんまだよ」  肩を抱かれて優しく引き寄せられると、口やまぶた、頬、耳、色々なところにキスが降ってきた。 「あ、東京タワーのところで撮ったやつ友達が送ってくれたんだけど、見る?」 「うん、見たい」  送る? と聞かなかったのは、その写真を先生が持っていたら、特定の誰かと繋がっているのがバレてしまうからだ。  スマホを開き写真を見せると、あきは親指と人差し指でズームにして、俺たちがふたり並んでいるところを眺めた。 「深澄、うれしそう」 「え? この顔のどこが?」  どちらかというと、仏頂面に近い。  他方、三船先生は、いつもどおりの優しい笑みだ。 「だってうれしそうじゃない。他のひとには分からないと思うけど」 「そっかあ」  口ではふーんくらいの感じで言ったけど、正直、飛び上がるほどうれしかった。  やっぱり、ナチュラルな自分を知ってくれているのは、あきだけでいいと思う。 「修学旅行が終わっちゃうと、いよいよ卒業が近づいてるんだって感じがするね」  あきがしみじみと言う。 「それっていいこと? 悪いこと?」 「半々かな。コソコソしなくていいのは良いけど、学校で遠巻きにでも深澄の姿を見られるのはうれしくて、それがなくなるのはちょっと寂しいかな」 「俺もそう思う」  あきの腕の中に顔を埋めると、あきは、いいこいいことなでてくれた。 「男で教師でごめんね」 「何言ってるの。そんなの謝ることじゃない」 「深澄の卒業を素直に喜べるように、残りの5ヶ月、全力でバックアップします」 「うん」  俺が顔を上げると、あきは赤ちゃんをあやすみたいな目で、微笑んだ。 「いまは、僕が教師なせいで不自由なことがたくさんあると思うけど……隠したり、嘘ついたりね。でも最後は、僕のこと、先生で良かったって思って欲しいな。だから頑張るね」 「うん。俺も、晴れやかに送り出してもらえるように頑張る」  大事な約束ができた。  ぎゅーっと抱きつくと、あきも同じように返してくれた。  そして、頭の上から穏やかな声で言われたのは。 「10年前、18歳の僕が教員を目指したのは、こうして18歳になる君を見守るためだったのかも」 <6章 東京 終>

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