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『千のちんこの神隠し』6
「それよりあんた自身はどうすんだい?」
声色が急に低くなってぼくはびくりと肩を揺らしました。なにも言えないぼくに珍婆は畳み掛けてきます。
「まさか金もないのにここに入ったわけじゃないだろうね? そんなの泥棒と同じじゃないか」
まるで借金の取り立てるやくざみたいに迫力がありました。お金がないのは本当だったので、黙るしかありません。
「泥棒には罰を与えないと。あたしはあんたみたいな棒っ切れのようなガキは趣味じゃないが、決まりは決まりだからね」
――ここではお金がない者と働かない者は珍婆に食べられちまうのさ
(あの猫の少年が言っていたことは本当だったんだ)
ぼくは怖くなって泣きたくなりました。でも、絶対に泣いちゃだめだと思いました。泣いたら食べられるような気がしたからです。
「ぼく……あの……その……」
いつの間にか俯いて床を見ていました。ぼくは決心すると顔を上げて珍婆に向かって言いました。
「ぼく、ここに働きにきました!」
「なんだって?」
「ここで働かせてください!」
ずっと余裕だった珍婆は背もたれから体を浮かせて呆然とぼくを見つめています。ぼくは聞こえなかったのかと思ってさらに大声で叫びました。
「ここで働かせてくださいっ!」
「だ〜ま〜れ〜!」
毛もよだつような地鳴りのような叫び声が部屋中に響き、珍婆は勃起しました。あまりの巨大さに部屋の中に塔が建っているみたいでした。その巨体が体がふわりと浮いたかと思うと、猛スピードでぼくに向かって飛んできました。勢い余って珍婆の大きな先端がぼくの頬をはたきました。
「うっ……!」
ぎゅっと目をつぶって衝撃に耐えます。棒立ちになってるぼくの頬を珍婆は何度も突きました。
「なんで、あたしが、こんな役立たずのガキを雇わないといけないんだ!」
負けるもんか、負けるもんか、負けるもんか。
ぼくは心の中で何度もそう唱えると両目を見開いて、自分から珍婆におでこを擦り付けました。
「でも! ぼく! ここで! 働きたい!」
ぼくは力いっぱい叫びました。そしておでこで珍婆を押し返すとしばらくにらみ合いました。やがて、珍婆の体がぐにゃりと曲がりました。かちかちのちんちんから、普通のちんちんになったみたいです。珍婆は長いため息を付いた後、ようやくぼくから離れました。
「……誰からここの決まりを聞いたんだい?」
「ここで働かせてください!」
「誰から聞いたのか言いな。そしたら働かせてあげるよ」
「……ね、猫の……」
「ミィか。あのエロガキ。……さてはお仕置き欲しさに人間に入れ知恵をしたね……」
珍婆はぼくに背を向けてのそのそと、さっきいた机まで戻りました。そして机に転がっていた細いパイプを玉の下に咥えると、白い煙を吐き出しました。
「あんた、名前は?」
「りゅうじ……。せがわりゅうじ。」
「贅沢な名前だね。あんたの名前は『お子様ちんぽ』。今日からあんたは『お子様ちんぽ』だよ」
確かに自分の名前が贅沢だと思えるほど、酷い名前だと思いました。
でも文句は言えないので、ぼくは頷きました。
「話は終わりだよ、さっさと出ていきな」
一方的に話を切り上げられると、ぼくは書斎から追い出されました。
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