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『千のちんこの神隠し』7

***   「あんたも出ていったらどうだい」  りゅうが出ていったあと、珍婆は背もたれの長い椅子に腰掛けながら呟いた。先端の亀頭は書類に垂れたままだ。しかし反応はない。  珍婆は咥えていたパイプを灰皿に置くと、椅子を回して背後のカーテンを勢いよく開いた。すると窓に貼り付くようにして立ってい小さなちんちんがそこにいた。いや、そのちんこは性器として見れば立派なサイズであったが、巨大すぎる珍婆の前では全てのちんこが粗チンになってしまうのだ。 「影でコソコソしてみっともないね」  珍婆に見下され、ちんちんはあたふたとしていたが、出ていこうとはしなかった。代わりに何かを伝えようともじもじしている。そのちんちんは、珍婆と違い言葉を操れなかった。そんな様子に見兼ねた珍婆がその胸中を察した。 「……気になるのかい」  力強く頷くちんちん。そしてまだ何かを伝えたがっているちんちんに珍婆はそっぽを向いた。 「どうせ一週間もしないうちに逃げ出すさ。忘れるんじゃないよ。あの子はあんたを捨てた人間なんだよ。どのちんこがあんたなのか見分けだってつきやしないさ」  ちんちんの動きがぴたりと止まった。それでもしばらくはその場に立ち尽くしていたが、やがてとぼとぼと書斎を後にしたのであった。 ***  さっき登ってきた暗い階段を降りていくと、猫の少年(……たしか、ミィって言ってた)がぼくを待っていました。 「よお、お子様ちんぽ」  ミィは開口一番そう言ったので、ぼくはびっくりしました。 「え、なんで?」 「その調子なら上手くいったみたいだな。珍婆に認められたやつは、最初はみんな『お子様ちんぽ』って名付けられるんだ。早く名前で呼んでもらえるようにがんばれよ」  肉球のある手でぼくは背中を叩かれました。ミィは笑顔で喜んでいるので、ぼくも嬉しくなってお礼を言いました。 「ミィくん、色々教えてくれてありがとう」 「ミィでいいって。……それより」  急に声が落とされるとぼくの耳元でそっと囁きました。 「珍婆、オレのことなんか言ってなかったか?」 「なんかって?」 「お前にヒントをやったこと、怒ってただろ」 「う、うん……」  ぼくは少し罪悪感を感じながら頷きました。こんなに親切にしてくれたミィを珍婆に言いつけてしまったからです。でもミィの表情は怒ってませんでした。頬が赤くなって目がうるうるして口元がだらしなく開いています。どこかで見たことあるな、と思ったら、えっちしてる時のタダシさんにそっくりでした。 「お仕置きにケツにちんこぶちこむって言ってなかったか?」 「言ってないよ……」 「嘘だろ。じゃあ、おもちゃ責めにしてやるとか?」 「言ってない……」  否定すると、ミィはがっくりと項垂れました。 「なんだよ、つまんねぇな」  ぼくはなぜがっかりしているのかよくわからないまま、ミィを励まそうと思いました。 「良かったじゃん、ミィ。そんなことしたらおしりが痛くなるよ」 「お前はホントにお子様だな。ケツをズボズボすると気持ちいいんだぜ。ちんこ扱く百倍気持ちいい。頭が真っ白になって身体中がビリビリするんだ」 「ふーん」  それって、乳首を触るよりも気持ちいいのかな?  今までおしりの穴なんて気にしたことなかったけれど、今度タダシさんに聞いてみようと思いました。そう思うとなんだかぼくまでえっちな気分になってきます。ミィは、はあと大きなため息をつきました。 「はぁ……。早くお客さんに挿れてもらいてぇなー」  お客さんという言葉にえっちな気分は吹き飛びました。ここで働くと言ってしまったことを思い出したからです。 「ぼ、ぼくもおしりにちんちん挿れられるの?」 「ばーか。そんなご褒美は最後に決まってるだろ。最初は掃除とか雑用から始めるんだよ」 「そっか、良かった」  ぼくは心の底からほっとしました。いくら働くと言ってもおしりにちんちんを挿れられるなんて絶対に嫌です。ぼくは絶対に挿れる側でありたいです。 「それよりお前はなんでこんなところに来たんだよ」  風呂屋の中を案内しながら、ミィはぼくに尋ねました。 「ぼく、タダシさんのちんちんを探しに来たんだ。その、ちんちんはいらないって勘違いしてここに来ちゃったみたいだから、ちゃんと話したいと思ったんだ」 「見つけるのは無理じゃねぇの?」  あっさりと言い放ったミィにぼくはびっくりして黙ってしまいました。そんなぼくを見てミィは少し慌てた様子でした。 「ここには毎日たくさんのちんこが遊びに来るし、ちんこの見分けなんて分かんねぇしさ」 「そうかも……」  風呂屋の中にはたくさんのちんちんがいました。確かにどれがタダシさんのちんちんかなんて、ぼくもわからないかも知れません。 「まあ、でも……、見つかるといいな」 「うん!」  元気よく頷くとミィは少しほっとしたように小さく笑いました。

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