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『千のちんこの神隠し』12

――……りゅうくん」  心地いい柔らかな声がぼくを呼びます。誰かの腕に抱きとめられて、あったかいです。大好きで懐かしい気持ち。その誰かを追いかけるようにしてぼくは目を覚ましました。 「ああ、りゅうくん、良かった!」  柔らかな茶髪の髪がほっぺに触れて、太い腕に抱きしめられました。押し付けられた服から柔軟剤の花の香りに混じってお線香の匂いがします。タダシさんです。タダシさんがぼくを抱きしめていました。  タダシさんの肩越しに街灯が眩しく光っています。車の音が遠くに聞こえます。あたりはすっかり夜で、ここが穴に落ちた新宿の公園だということがわかりました。 (あれ? どうして、ここに? たしかぼくはハシゴを登っていて……)  今までのことを思い出した瞬間、一気に目が覚めました。 「タダシさんっ」  ぼくは、まっさきにタダシさんのおっぱいを揉みました。おっぱいがマシュマロみたいになっていないか確かめるためです。  タダシさんのおっぱいはふわふわだけど綿がぎっしり詰まったクッションみたいに弾力がありました。揉むとちょっと押し返されるような感触がとっても懐かしいです。 「よかった。タダシさんだ……」  思わずぼくはタダシさんのおっぱいに顔を埋めました。本当にタダシさんなんだと思うと、胸がいっぱいになって涙が溢れてきました。 「タダシさん……ごめんね……」  絶対に泣かないって決めていたのに、一度涙があふれるともう止まらなくなりました。ぼくは力いっぱい顔を押し付けたまま、タダシさんの服にいっぱい涙をこぼしました。 「言うこときかなくてごめんね。バカって言ってごめんね」  いっぱい泣いてしまったぼくをタダシさんは優しく背中をなで続けてくれました。そしたら少し落ち着いてゆっくり息ができるようになりました。足元の木の陰からタダシさんのちんちんがこちらを見上げています。 「あのね、ぼく……ちんちん連れて帰ってきたんだよ。ちんちんはさ、へんてこなお風呂屋さんにいて、全然見つからなかったけど、でも頑張って探して、見つけたんだよ」 「頑張ったんですね」 「ちんちんのこと……いらないって言わないよね?」  体を離してタダシさんを見ると、いつものように優しく笑ってくれました。そしてぼくの頭を撫でてくれます。 「言いませんよ。見つけてきてくれてありがとうございます」 「よかった……っ! ちんちんもおいでよ」  そう言うとぼくたちは三人で抱き合いました。タダシさんのありがとうという言葉だけでここまで頑張ってよかったって思えます。嬉しい気持ちになっていると、タダシさんが背中をさすりながら遠慮がちに口を開きました。 「ところでりゅうくん……、もしかして、漏らしました?」 「ぼくじゃないよぉ!」  突然の理不尽に、ぼくは思わず叫びました。

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