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第4話

今日は先週約束していた昌樹とのお出かけ。 仕事は一段落していたので断る理由はなくひとつ返事で了承した。 どこか心が踊るような高揚感があるが、空は反対に少し薄暗く淀んだグレーのような色をしている。 「雪でも降るのかな。そう思うと寒い」 タートルネックとショート丈のコートと暖かそうな服装でも白い息を見ると余計寒く感じた。柱によし掛かり来るのを待つ。 すると、横から頬をつんと軽く押され誰だと振り向くとそれは昌樹だった。 「待たせたね。寒かっただろ?頬っぺが冷たい」 お店で見るギャルソン姿の昌樹とは違い、今日は私服だ。ネイビーのロングコートと赤いニットに黒いスキニーパンツで黒い眼鏡を掛けて手にはマフラーを持っていて更にかっこよさが増していた。 「・・・そんな待ってないですよ」 先程のざわめきが更にうるさくなった気がして1度目を逸らすように答える。 「やっぱりタートルネックで首は隠せても頬っぺは寒いね。これ巻きなよ」 手に持っていた黒いマフラーを一真に2回ほど巻き終えると笑っていた。 「はは。巻きすぎて顔半分隠れちゃった、ごめん」 もう一度外し1回巻いて長さを調節する。その時に昌樹から柑橘系の香水の香りがしてどこかでかんだことのある香りだった。 懐かしくて落ち着く香りだ。 「着いてきて欲しい所があるんだ」 近づいた距離が一瞬にして離れてしまうがざわついた気持ちが1度元通りになると背の高い昌樹見上げる形となる。 「俺も行って大丈夫ですか?」 「うん、大丈夫。というか君頼りなんだ」 言っていることに理解出来なくてとりあえず着いていくしかない。 たどり着いたのは高そうなジュエリーショップで人生初めてのジュエリーショップだった。 相手にプレゼントするにも高価なアクセサリーを選ばないし踏み入れることはないと思っていた。 来店するとすぐに店員が寄ってきてアクセサリーの案内をされそれを右から左にへ流すように聞いていたが気になって聞いてみた。 「昌樹さん、アクセサリー買うってことですか?」 「うん、そうだよ。女の人にプレゼントって言ったらアクセサリーかなと安易な考え。けど、何が良いか解らないし1人だと中々入りずらくて一真くんにお願いしたんだ」 だからかと納得するも昌樹の口から女の人と出たことに吃驚してしまう。 「あ、あの、女の人にって・・・」 「俺の大切な人」 昌樹は愛おしい顔ではっきりとそう言った。 (この人をそんな顔をさせる程の相手なんだろうな) 羨ましく悲しい気持ちもあった。 「でね、一真くんに聞きたいんだけど、もし好きな人を思って買うなら何を思って買う?」 好きな人と言われて思い浮かべたのは、好きだった明里先輩だった。 一目惚れだった。なぜ好きになったのかと問われれば一瞬だったからはっきりわからないけど、1番明里先輩を好きだと思わせたのは明るく温かみのある笑顔だった。 あの人笑顔を見ると心まで元気になる。だから笑う顔が見たくて冗談を言って笑わせてたこともあった。あの人の笑顔は輝いていた。 「笑顔です、星のようにキラキラして・・・と俺は思います」 言っといて恥ずかしくて最後の方は小さめに終わったが、納得するように考え、昌樹は店員に何か尋ねてそれを元に店員は何個かアクセサリーを持ってきて手元に置いた。 指輪以外のアクセサリーがあり、品定めするように昌樹は見ていたが一真は一瞬にしてひとつのものに釘付けになった。 ゴールドの丸い輪の中に星とダイヤが2個連なっていたピアスだった。 (先輩、ピアス空いてたしこれ似合いそうだ) プレゼントする訳でもなく勝手に考えて自己嫌悪する。 そんな俺をじっと見ていたのは気づかなかった。 「これでお願いします。プレゼント用で包んでください」 そう指を刺したのは一真が見ていたピアスだった。

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