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第7話

デートの日の朝、なんと風邪を引いてしまったらしい。 だるい身体を起こし近くにある体温計を脇に挟めると数分で表示された数字は38度だった この日の為に納期が早い仕事を片付ける為に食事も睡眠もそこそこで仕事していたら昨日の夜から少し調子が悪く次の日に治るだろうと栄養剤飲んで寝たのだがやはり良くなることはなかった。 「どうしよう・・・はあ、移してもあれだし昌樹さんにはまた今度にしてもらおう」 昌樹にメールをしまたベッドに倒れ込むと電話がなる。 『はい、もしもし住初です』 鼻をすすりながら 『おはよう、一真くん。もし嫌じゃなければ看病しに行くよ?』 『いえ!そんな悪いですよ!風邪移りますしそこまで面倒かける訳に行かないです』 『感だけど、一真くん1人だとご飯食べなさそうだし看病は慣れてるしさせて欲しいんだ』 最後の一言が気のせいかもしれないけどドキッとする甘い一言に聞こえた。 そんなこと言われたら断れやしない。 『・・・お言葉に甘えてお願いします』 急いでバラバラになっていた書類を片付けた所で身体がだるくてふらついてしまう。 場所をメールで伝えてから30分程で家のチャイムがなるのを聞きインターンホンで昌樹を確認し急いでマスクを付けてドアを開けた。 「体調はどうかな?色々買ってきたんだ」 「おはようございます。すみません、中へどうぞ」 昌樹の顔を見て、先程まで熱い体が更に熱くなった気がした。 「まだ顔赤いね?キッチン借りていいかな?ほら、一真くんは横になってて」 押されるようにベッドに入り、好きに使って良いと伝えて布団の温もりに包まれることにした。 「ありがとう。早く治るといいね」 ふと、頭に手が乗り撫でられ、昌樹の柔らかい笑顔にぎゅっと心臓が掴まれ口元に布団で隠す。 (ああ、やばい。なんでそんな優しいんだよ) キッチンに向かう昌樹の背中を追いながらそう思った。 俺は昌樹さんのことが恋愛的な意味で好きだけど昌樹さんはどう思ってるんだろうか。 世話好きの昌樹さんのことだから常連の中でも親しい人としたか思ってないのかな。 だけどそれでも常連の中の『親しい人』でもいいかと思いながらいつの間にか眠りについた。 ふわふわした感覚の中でいつも想像した夢を見た。 いつかみた好きな人と幸せに笑いあってる夢。それが昌樹さんだったらといつも思ってた。 いつの間にか昌樹との距離が近くなって唇が付きそうな時に恥ずかしさに耐えきれず声を上げながら目覚めた。 「あはは。笑ってたと思えば起きて声あげるってなんの夢見てたの?」 「へ?」 昌樹はベッド際に座って笑っているのを見て余計恥ずかしくなり布団に顔を埋める。 「一真くんは本当に面白いね。寝てる間に体温測らせて貰ったけど熱は落ち着いたみたいだよ。後は食事とって市販の薬だけど飲んでね」 米のいい匂いがして見ると鮭の乗ったお粥だった。 「す、すみません、色々してもらって。今日はごめんなさい」 お粥に手をつけて口に入れると食欲の無かったのに胃が受け入れてくれた。 まさきの優しさが料理に現れる気がする。 「お礼なんていいよ。一真くんの事だから余りいい食事してないだろうなって思ってたし」 確かにそうかもしれない。昌樹の店にいる時も食事を取らずにコーヒーばかり摂取しろくに食事を取らずにいた。仕事の時も特にそうだ。この一週間栄養剤ばかりで体調を崩すのは一目瞭然だった。 「お見通しですね・・・」 苦笑いしながら全てのお粥を食べ終えた。 「一真くんの仕事少しは理解してるけど無理しすぎは良くないよ?俺、心配だよ」 その心配は俺の事を特別として思ってのことだろうか。 このまでしてくれた昌樹にこれ以上のことを望んではいけない。これでいいんだ。 「一真くん?」 先程までは普通だったのに昌樹に名前を呼ばれた瞬間、頭がふわっとして昌樹の顔に触れた手が気持ちよくてただ真っ直ぐに見つめる。 時が止まったようにお互い見つめ合う形となりゆっくり唇に手が落ちていき、なぞられゾクッと身体が震える。 どのくらい見つめあったのか解らないけど、先に見た夢と重なった。けどそれと違うのはお互いの唇が重なったからだった。 「・・・昌樹さん」 通常だった頭が今になって頭が熱に侵されてるのか追いつかなくて重なった唇にすがりついて自ら求めていた。 (好き、好きだよ。これは夢だ、今日だけは許して。今日だけは)

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