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第9話
この日が来てしまったと考えたら所で時間が巻きもどることは無い。
魔法が使えたらと子供みたいな事を思う。
鏡の前でスーツに手を通して身だしなみチェックをするとあまりに合わなさに項垂れた。20半ばにしてこうも似合わないのは顔が童顔ということだろう。
認めたくはないけど。
この一週間まともに仕事も睡眠も取れずにいた。昨日よりはマシだが隈が酷くマスクで隠したところで目元は丸見えで結婚式でこんな人が居たら怪しくて目立ってしまうのは一目瞭然だ。
行きたくない。それが本音なのに招待され行くと返事してしまったので重たい足を動かして式場に向かうことにした。
受付を済まして居づらさ極限まで達してしまった俺は外の空気を吸おうと外に出て思い返す。
明里先輩のことは既に吹っ切れたけどまだモヤモヤとした感情が残る。それは何が原因なのか分かり切っていた。
深く溜息をつき項垂れるようにしゃがみこんで溜息をつく。もうそれが数週間で癖になっている。
「そこで蹲ってなにしてんの」
誰かが目の前に立っている。声がする。
誰だろう。こんな俺に声かけるなんて、勇気あるなとゆっくり顔を上げると心臓が騒ぎ立てると同時に逃げ出したいと感情が蘇る。
「やっと会えた」
黒いコートに煌びやかなスーツに身を纏った昌樹が目に入る。
ここは目立つなと言いながら俺を立たせて物陰に引っ張るように連れてこられたのは入口から離れた柱のところだった。
「あの時はごめんね」
その言葉に夢ではないことが分かる。けどそれはそうでは無いことは自分でもわかっていた。あの感触と手に感じた温もりは本物だ。
けど昌樹は遊びだったのだと明里先輩との出来事で思い知った。
「・・・気にしてないです。結婚おめでとうございます」
「結婚?・・・ああ〜そういう事か。まあいいや。ちょっと目を閉じて」
なんの事かよく分からず言われた通り目を閉じると唇に温もりを感じた。
咄嗟のことに頭が追いつかなくて考えている暇もなく塞がれる。
体調が良くない俺にとっては酸素の取り入れ方なんて忘れるほど目眩がして立つことが難しくなりしゃがみこんでしまった。
「よし、行こうか」
そんな言葉が頭の隅で聞こえた気がして姫様抱っこされたこと目的地に着くまで気づかなかった。
「んん・・・?」
真っ白い見覚えのない場所を見渡していたら声が聴こえた。
「ちょっとまーくん、一真くんに何かしたでしょ!この間と言い、この隈だってまーくんのせいだよ、絶対!」
明里先輩の声?なんで怒ってるんだろう。
まーくんって聞いた事ある名前だ。
今何時か分からず確認しようと起き上がりソファーに寝かされたことに気づいた。
目の先に明里先輩と昌樹がいることが分かるが、何故か明里先輩に昌樹が問い詰められてることに気づく。
何故そんなことにと思ったが2人は夫婦だからいるのは普通だ分かった。
「良かった〜!一真くん起きたね!兄がごめんね〜。まーくんに何かされたんでしょう」
何かされた・・・まあキスはされた事を思い出すとやはり明里先輩の前だと罪悪感が出できたのは一瞬だった。
「・・・兄?」
「そう、私のお兄ちゃんだよ?」
いつもとは違い純白の白いドレスに身を纏った明里先輩の顔は嘘をついてるようには見えなくてただ綺麗だなと感心した。
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