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「佐々木くん、大丈夫かい?」
「……ん」
佐々木を小脇に抱えたまま、曾川は自室の鍵を開けた。カチャリという金属音に佐々木の吐息が重なる。玄関のドアを開けて足を踏み入れた刹那、佐々木は曾川の首に抱き着いた。日本酒の香りが混じった甘い芳醇 な香りが鼻腔 を擽 る。
若いオスの香りというよりは若葉のような清々 しさに曾川は息を飲んだ。目の前に滑 らかで陶器のように真っ白な首筋がある。曾川は堪 らずその場に口づけた。
「……あっ」
佐々木の身体がびくりと跳ねる。まだ虚 ろな目付きで曾川を見つめ、ますますしがみ着いてくる。耳元に聞こえる甘い吐息。その時、曾川の中の何かが音をたてて崩れた。
「……ひゃっ。か、課長、何を!」
佐々木を抱き竦 め、薄い唇を割る。右手でネクタイに手を伸ばし、器用に外した。ワイシャツのボタンに手を掛け、こちらも器用に外してゆく。胸の突起に曾川の指先が触れた刹那、一段と佐々木の身体は跳ねた。
「……う、うふぅ」
玄関からリビングへと移動し、ソファの上で絡み合う二人。いつしか曾川の右手は佐々木の股間に伸びており、その場所は異変をきたしていた。若い憤 りが天を指す。それを曾川はしっかりと握り締め、それに律動を加えていった。
「……課長っっ!!」
佐々木は堪らず曾川の名を呼んだ。力の入らない身体を曾川に預け、その身が仄かに紅色を帯びる。酒の力だけではないはずだ。佐々木は確かに曾川から与えられる快楽に、愛撫に溺れていた。
(何でこんなことに……っっ!!)
佐々木の思考は混乱を極めた。まだ回復しない意識の中、ただ快楽の波が佐々木を襲う。曾川は佐々木の下半身を脱がせてしまい、その憤りを口内に沈めた。
「か、課長! だ、駄目 ですっっ!!」
佐々木は顔を両手で覆い隠し、首を振って快楽に堪えた。曾川の口の中の佐々木は頭を擡 げて行き、台詞とは裏腹に曾川の舌先を快く受け入れる。
「……課長、課長っっ!」
佐々木はただ曾川を呼び、その声が曾川の耳を犯す。佐々木に与える愛撫だけで自身も変調をきたし、その場所に佐々木の手を導いた。佐々木の身体が再び跳ねる。曾川は目を細めて穏やかに笑み、残った手の指を佐々木の臀部 へと進めた。
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