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第25話 暴かれた秘密⑥

「お疲れ様です。戻りました」  顔を冷やしてからパントリーに戻ると、すでに他のスタッフは帰ったあとで、葉山だけが暁人の戻りを待っていた。 「おお、柴! おまえ気分悪くて倒れたことになってるから、明日適当に話合わせとけよ?さっきまで竹内がおまえを待ってるって言い張ってたんだけどな、ギャーギャーうるせぇから無理矢理帰したとこ」 「……ありがとうございます」 「心配してたぞ、竹内」 「はい」  暁人だって分かっている。先輩の竹内がいつも自分を気に掛けてくれていることは。 「事情が事情だし、妙に距離置きたがるおまえの気持ちも分からないでもないけど。竹内がおまえのこと本気で可愛がってんのは分かるな?」 「はい……分かってます。ちゃんと」 「なら、いい。もう帰れ、遅くなるから」 「あ、葉山さんは……?」 「ああ。俺も帰る。なんだ? 一緒に帰って欲しいのか?」  葉山が少し意地悪な笑みを浮かべ、からかうように言ったので、なんだか葉山に甘えているような自分が急に恥ずかしくなった暁人は「結構です。お疲れさまでした」と言ってパントリーを出た。 「こらこらこら。柴! 待てって!」  パントリーの横の階段を降りる暁人の後を追って葉山が階段を降りて来た。 「はは。ちょっとからかっただけだろ? そう怒るなって」 「べつに怒ってませんし」 「なぁ、待てよ。どーせ近所なんだから一緒に帰ろうぜ」 「一人で帰れます」  暁人が答え、更衣室で急いで着替えをしていると、そんな暁人を見て葉山がふっと楽しそうに笑った。急いで着替えたはずなのに、葉山の方が先に着替えを済ませている。 「何ですか?」 「柴、やっぱ面白いな。顔面死んでるとか言われてるけど、全然表情豊かじゃねぇか」 「はい?」 「もっと出してけよ、そういうの。ここは元の職場じゃないんだし。まえのとこではいろいろあったのかもしれないけど、ここで同じことになるとは限らない。少なくとも、おまえがゲイだってことで何か言うやつがいたら、俺は守ってやるつもりだよ。おまえを」  不意打ちの葉山の言葉に、どうしてか胸が痛くなる。  傷つけられた痛みではなく、どちらかといえば言われ慣れない温かな言葉が沁みるような痛みだ。 「もっと俺らを信じろよ」  そう言った葉山が、こちらが照れて目を逸らしそうになるほど真っ直ぐに暁人を見つめた。  ──ダメだ。また涙が出そうだ。  守ってやる。信じろ。なんて言葉、いままで誰かに言われたことなんてなかった。 「つーわけで。帰るか」  それまでの真剣な顔をくしゃっと崩して葉山が笑った。そうしていつものように暁人の頭をかき混ぜる。照れくささのあまり、熱くなる顔を手の甲で隠しながら「髪、乱れるんですけど」と呟くと、葉山が 「はは。口うるせぇなぁ、柴は」  とさらに楽しそうに白い歯を見せて笑った。  更衣室を出て、通用口を出て行った葉山の背中を暁人は追うように歩いた。大きな背中、風になびく短い髪。まるで太陽のような葉山の笑顔が暁人には眩しく映る。 「ほんと勘弁……」  ──こんな感情持ってはいけない。自分を気に掛け、ゲイだと知ってもなお態度を変えることのない彼にだからこそ尚更。  自分はどうして、こんなふうにしか生まれてこれなかったのだろう。

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