１３　　怖がり猫の愛し方 「このソファじゃ狭いな」 　葉山がソファから立ち上がってすぐ横のベッドに移動すると、柴嵜が葉山の正面に立った。そっと彼の手を引いてやると、柴嵜がゆっくりと近づいて葉山の膝の上に跨るようにして座り、そのまま唇を重ねた。吸い付くようにねっとりと何度も唇を触れさせて、少し離れてもっと深く触れる。 「……は、っ」 「ん」 　舌先を合わせて舐めてから深く絡ませる。どちらから逃げればそれを追い掛け、向かってくればそれを受け入れ、口の中が溶けてどろどろになってしまうのではないかと思うくらい何度も何度もキスを交わした。 　普段はあまり表情の変わらない柴嵜の熱を帯びた表情や、時折口の端から漏れる小さな声に不思議なほどぞくぞくし、気づけば求めることに夢中になっていた。 　どちらからともなく着ている服を脱ぎにかかったが、興奮しているのか上手く脱げなくてもたついたところを互いに手を貸してようやく半裸になった。 　柴嵜が膝に跨ったまま両手で葉山の首筋や胸を撫でながら、その撫でたあとを唇で追い掛けるようにキスを落としていく。普段の柴嵜が欲とは縁遠い雰囲気を醸し出しているからなのか、必死に葉山の身体に舌を這わせる姿にさらに興奮を煽られる。 　──なんつぅ、エロい顔してんだ。 　肩で息をしながら柴嵜から与えられる愛撫を受け止めているうちに、なんともいえない気持ちが湧き上がるのを感じた。 「……なんか、腹立つな」 　ぼそりと呟くと、柴嵜が葉山の腹から唇を離して顔を上げた。 「なにか言いましたか」 「腹立つ。おまえが他の男ともこんなことしてたのかと思うと」 「……なんですか、それ」 「分かんね」 　一体なんなのだろうか、この気持ちは。 　柴嵜はいつから自分を好きだったのだろう。自分を好きだったにも関わらず、他の男にも同じ行為をしていたと思うと、柴嵜の気持ちに気付けなかったことを悔しいとさえ思う。こんな今更で身勝手な感情を一体何と言えば──？