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黙して語らず(3)*
酒が進むにつれて、飲んでいる時間より、じゃれあっている時間の方が長くなってきた。
環が膝の上に座らせた縁の胸に口づけている。
バスローブは肩がはだけ、わずかに肌が上気している。
環が舌で煽るたび、ひくり、ひくりと縁が肩を震わせる。
「ん…ぁ、気持ちい、な」
縁が仰向いて苦しげにこぼす。
その手は環の局部をさすっている。
口づけの合間にするりと白い手が下着の中に入り込む。
「、えに」
「ん?」
「いや、ちょっとびっくりした」
「こんなんで驚かないでよ」
左手を環の肩に、右手で陰部を扱き上げる。
「あぁ、ここがいいの?」
環の眉間の皺を見て、縁が笑む。
唇を重ね、口内を犯しながら攻め立てる。
完全に環のモノが立ち上がったところで手を止めた。
「縁、人が変わるな」
「駄目かな?」
満面の笑みで楽しそうに問う。
「いや、これはこれで、いい」
笑みに見惚れながら環は縁を押し倒した。
バスローブの紐を解き、下着を脱がす。
それは既に勃ち上がっている。
縁に覆い被さるように体を重ね、己を合わせて扱く。
「あ、あぁ」
環の体の下で縁がのけ反る。
「じっとしてろ」
「…だっ、て…っ」
「気持ち良さそうじゃないか、ええ?」
手の動きが速くなる。
「それ、は、俺、だめ…!」
縁が環に抱きつくように腕を回して、数回、痙攣する。
環はぐったりと脱力した縁をベッドに運び、ベッドカバーを剥ぎ取ると縁を横たえる。
「はあ…俺が先にいかされるなんてショックだな」
ようやく回復した縁は手を伸ばしてティッシュを取ると、吐き出した精を拭う。
「大した自信じゃないか」
「今日は久しぶりだったから、つい油断した」
縁が口を尖らせる。
「はは。その自信、へし折ってやるよ。優しくな」
仰向けの縁の上に再び覆い被さり、額に口づける。
縁の腰の下にクッションをあてがうと、菊座を軽く指で解す。
「…んん」
「縁、さっき久しぶりって言ってたか?」
「ん、まあ」
「そっか」
数本指が入るところまで解したところで、縁が焦れた。
「ねぇ、もう挿入れてよ…」
「大丈夫か?」
環が縁の顔を見ると、とっさに縁は腕で顔を隠した。
「無駄に恥ずかしいから!挿入れろよ!」
乱暴な言葉使いとは裏腹に、縁の白い肌が耳まで真っ赤になっているのが見える。
環はにやりと笑う。
「その腕どけて顔見せてくれたら挿入れてやるよ」
「なんで意地悪するんだよ…!」
「自信へし折ってやるって言ったろ?」
「優しく折ってくれるんじゃないのかよ…」
渋々縁が腕をのける。ほんのり赤く染まった肌、潤んだ瞳。
悔しそうに噛み締めた唇。
「…つくづくお前ってやつは可愛いな」
思わず環は見惚れた後、笑った。
「!馬っ鹿野郎!さっさと挿入れろ!」
「わかったよ」
環は性器をあてがうと、ゆっくりと挿入していく。
「ぅ、ぁ、あ」
縁が呻き声を漏らす。
「痛いか?」
尋ねると、縁は首を左右に振った。
根本まで納めると、ゆっくりと引き抜き、今度は勢いよくぶちこんだ。
「ぁん!」
快楽で縁の眉が歪んでいる。
「大丈夫そうだな」
「…いいから、早く」
「ん?」
「早く、くれよ」
縁の目尻からぽろぽろと雫が落ちている。
愛しさに思わず環は雫を舌で受ける。
…なぜか甘いような気がした。
環は感傷を無理やり絶ちきり、わざと乱暴に腰を使い始めた。
縁が歓喜の声で喘ぎ、釣られて環も息が荒くなっていく。
縁の喘ぎ声が絶頂に達し、同時に環も縁の中で果てた。
しばらく二人で肩で息をしていたが、環が縁を抱き起こし、膝の上に座らせた。
力の抜けた縁は環の肩にしがみつく。
「完全にへし折ったな」
「るせぇ」
憎まれ口をたたく縁の唇をキスで塞ぐ。
「まだいくぞ」
「当たり前だ」
今度は下から縁を貫く勢いで突き上げる。
「んっ!」
突くたびに、環の肩にしがみついた腕に力がこもり、環の心が痛む。
突き上げて、突き上げて、縁が達しそうになる寸前で腰を止めた。
「なんだよ?」
環は無言で縁を膝から下ろし、シーツの上に四つん這いにさせる。
そのままの勢いで腰を打ちつける。
「んぁっ」
続けざまに腰を使ううちに、また縁の声がとろけてくる。
美しく鍛え上げられた背中を眺めながら、本能のままに縁の中を掻き乱す。
縁がシーツを掴む指も真っ白になるほど力がこもっている。
喘ぎ声が高まっていくうち、ふと縁が片手を後ろに伸ばしてきた。
「手、繋いでっ!」
苦しそうな懇願の声。
環は迷わずその手に指を絡めた。
「ぁ、ぁ、ああっ!」
縁が叫ぶように達し、遅れて環もいった。
◇ ◇ ◇
シャワーを浴び、自然とそのまま眠る流れになった。
片方のベッドはだいぶ乱してしまったので、もう片方のベッドに二人で横になった。
「狭くないか?大丈夫?」
「平気だよ。環さんもそんなに端行かなくて大丈夫」
灯りを絞って薄暗くする。縁はすぐに眠くなったのか、目がとろんとして口数が減ってきた。
環が二人の間に上向きに片手を置いていると、そこに手を重ねるようにして縁は眠ってしまった。
起こさぬよう、環はそっと縁の手を包み込むようにもう片方の手を乗せる。
さっきまで快楽に溺れていたとは思えないほど清らかな寝顔に見える。
「…欲しくなっちまったな」
体だけでなく、心までも。縁の全てを欲しい。
求めても、叶わないのだろうか。
縁が絶頂に達していた時、その瞳に映っていたのは果たして環だったのだろうか。
寝顔を眺めながら、縁の全てを手に入れる術に頭を巡らせるうち、いつしか環も眠りに落ちていた。
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