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小鳥に捧げるセレナーデ(3)
「そういえばさ、メッセージのOlivierって何て読むの?」
流れる景色を眺めながらふと縁が聞いた。
「いい質問だ。フランス語でオリヴィエだよ。オリエ→オリヴィエ……駄洒落だよ。すぐに俺って分からないから、内緒のアカウント」
「いい質問ってどういうこと?」
「それは今夜のお楽しみかな」
しばらくすると車は高速道路にのり、横の景色が見えなくなった。
「そういえば、うちの姉貴、環さんが気に入ったらしいよ。前に写真見せたら、いいわぁって言ってた」
「そりゃ光栄だね。誉められたから言う訳じゃないけど、綺麗なお姉さんだね」
「似てないでしょ」
「うん?まあ、言われてみれば」
「血が繋がってないんだ。姉貴は親父の連れ子で、俺はお袋の連れ子なの。二人とも赤ん坊の頃の話だからどうでもいいんだけど」
「ふうん。なかなか運命的な姉弟だね」
環らしい言い回しだ。
「なにそれ、初めて言われた」
「ご両親はどこに住んでるんだ?」
「さあ?忘れた」
ちらっと環が縁を見る。
「それ冗談?」
「いや。あんまり仲良くないんだよ。俺もどうでもいいし」
「そのうち和解しろよ」
「やだね。気に入らないやつとは必要以上に仲良くしない主義なの。時間の無駄でしょ」
「今日はよく喋るわりにご機嫌斜めだな」
「コーヒーが不味かったから」
「なんだそれ」
環が鼻で笑い、しばらく沈黙が続いた。
◇ ◇ ◇
休憩のため、サービスエリアに立ち寄った。
飲み物を買った縁が階段に座って待っていると、環が後ろから来て縁の頭に手を置いた。
「ほんとに髪さらっさらだ。こっちの方が俺は好きだな」
「そう?ありがと。でもストレートだからワックスつけないと子どもっぽいでしょ」
「あぁ……それも、そうかもな。年齢不詳に見えるな」
「だから休みの日だけ」
「じゃあ俺はラッキーってことだな」
縁は環の言葉に思わず笑みをこぼした。
一休みを終えて再び走り出す。
少しずつ山が見えてきた。
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