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まりあからのご褒美(2)

そんな会話を交わした数日後。 縁の知らないところで、奏太の同期の飲み会が行われていた。 幹事は円だったが、翌日から旅行とかで一次会で早々に離脱した。 二次会、三次会と進むにつれて、女性が減り、最終的に奏太を含めた男5人になっていた。 通りすがった韓国料理屋に雪崩れ込む。 「俺らもさぁ、結構いい年だよな」 「まあな、もうすぐ30だし」 「香住はいいんだよ、顔がいいから女には困んないだろ」 「そんなことないさ」 「出世もしてるし」 「たまたまだけどな」 「誰か女の子紹介しろよ」 「無茶言うなよ」 運ばれてきたビールを煽る。 「沖田は、かなり年下の子と付き合ってたんじゃなかったのか?」 「別れたよ。飯の好みが合わなくてさぁ」 「細かいな」 「いやいや、結構重要よ?出掛けるたび飯決めるのに揉めるから。サラダとか軽いパスタとかしか食わないんだもん。草食動物かっての」 「伊藤も彼女いたろ?」 「先月までな。理由は聞かないでくれ」 「お、おう」 ちょっと場が落ち着いたところで、矯声が隣の席から響いた。 「あらぁ。奏太さんじゃなぁい」 身を乗り出しているのは言わずと知れたまりあだった。 「あれ、まりあさん」 「何何、香住知り合いか?」 美人と見て男どもが食いつく。 「あ、あぁ。一課の遠山くんのお姉さんだ」 「そちらはなぁに?お友だちで飲んでらっしゃるのぉ?」 「まあ、会社の同期で飲んでるところです」 「あらぁ、そうなのぉ?こっちも職場の飲み会なのよぉ」 いったんまりあの顔が引っ込む。 何やら向こうで相談している様子。 「ねえぇ、良かったらご一緒しませんことぉ?こっちもちょうど5人なのよぅ」 「え、えぇ。……どうする?いいかな?」 奏太が回りに聞くと、嫌と言うはずもなくOKが出た。 「じゃあ、合同にしましょうか」 奏太たちがテーブルの片側に詰め、空いたところにまりあたちが座る。 「えぇと、自己紹介からかしらぁ。遠山縁の姉のまりあです」 「恭子です」 ショートカットできりっとした顔つき。気が強そうにも見える。 「香苗ですー」 全体的にふんわりとした雰囲気を醸し出している。医者と言うよりはお嬢様といった風情だ。 「マキです」 てきぱきと物事をこなしそうな印象だ。この中では一番医者のイメージに近い。 「えっと、小百合です」 黒髪のロングストレートで、一番大人しそうな印象を受ける。 「あ、ええと、俺らもか。奏太です」 「沖田総司です」 「え、同姓同名?」 マキが反応する。 「そう。親が新撰組のマニアで、こんな名前に。でも覚えてもらいやすいから重宝してるけど」 「あー、悠人です」 「哲司です」 「祐也です」 自己紹介が終ったところで、悠人が切り出す。 「あのー、皆さんは何のお仕事を?」 「近くの帝都総合病院で医者やってます。みんな専門は違うけど」 マキが答える。 「え、あそこの病院こんな美人のお医者さんばっかりなの?今度行こうかな」 「いらしてくれたら太めの注射サービスしますね」 「ひゃー!」 ひとしきり沸いたところで、まりあがふと悪戯を思い付いた。 「ねぇ奏太さん、ちょっと協力してくれるかしらぁ」 もうかなり酒の入っている奏太は一も二もなく承諾した。 「ちょっとねぇ、写真を撮らせて欲しいのよぉ」 まりあは奏太の隣に座るとツーショットで撮影する。 撮る瞬間、まりあは奏太の頬に唇をつけた。 「あ、まりあずるーい!」 「ふふ。男一人追加するから許してよぉ」 まりあは撮った写真を特にコメントなく縁に送りつけた。

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