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まりあからのご褒美(3)
そのまま盛り上がって三十分ほど経った頃だろうか。
足音荒く一人の男が奏太達の席に近づいてきた。
「姉貴!悪戯もほどほどにしてくれよ!……奏太さんすみません。姉貴がご迷惑をお掛けして」
「あらぁ、やっぱり来たわねぇ」
「来たわねって、呼んだんじゃないの?」
恭子が聞く。
「私はさっき撮った写真を送っただけよぉ」
「えー?どうやってここが分かったの?」
「いや、画像に位置情報が付いてたんで、大体の場所は……」
「でもあれって、緯度と経度だけだろ?この店まで来れるか?」
「テーブルの上の料理が写りこんでたんで、アジア系料理の店かなと。後は外から内装見て探しました」
「……すげーな、お前」
「まあまあ、そっちに座りなさいな」
縁は奏太の隣に腰を下ろす。
「まりあの弟くんなの?可愛いじゃない」
「筋肉だけが取り柄の愚弟よぉ」
「ここまで呼びつけといて、そりゃないよ姉貴」
◇ ◇ ◇
その後もさんざん騒いだところでいい時間になったので、思い思いに連絡先を交換して宴はお開きとなった。
まりあと縁が家についたのは午前一時を回った頃だった。
「はあ……まったくもう。いい加減にしてよ」
縁が愚痴る。
「あらぁ、奏太さんと思う存分喋れたでしょぉ?感謝しなさいよね」
「まあ、それは……よかったけど」
「あと、思ったより早く来たからご褒美あげようかしらぁ」
「何?」
「これ」
まりあが携帯画面に画像を表示させて縁に見せる。
映っていたのは縁と奏太が喋っているところ。
奏太が機嫌の良さそうな笑顔で縁の話を聞いているツーショットだ。
「!!!」
「わざわざ音が出ないカメラアプリダウンロードしてまで撮ったのよぉ。いらない?」
「いるよ!お願いします。ください」
ソファに腰かけているまりあの足元に縁が膝まづく。
「あとぉ、奏太さんに頭ぽんぽんしてもらってるのもあるけどぉ」
頬杖をついた奏太が縁の頭に手を置いている。
「!何でもします!ください!」
縁は土下座しかねない勢いだ。
「はい。送ったわよぉ」
縁の携帯電話が二回鳴った。
縁は携帯電話を握りしめると玄関に向かった。
「ちょっとコンビニ行ってくる!」
「え、えぇ?何よぅ、急にどうしたのよぉ」
◇ ◇ ◇
翌日。縁の部屋のデスクの上に、写真立てが置かれた。
中に入っているのはもちろん奏太とのツーショット。
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