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第11話

 五、六時間目は美術の時間で、僕は昼休みの出来事を思い出しては下腹部を充血させ、足を組んで股間を隠した。離れた席で灯も唐突に伸びをしたり、足を組み替えたり落ち着かなくて、僕と目が合うと顔の横で小さく手を振ってくれた。  終学活が終わって気が抜けた。机に額をごっつんこさせていたら、僕の机に手を掛けて、灯が傍らに片膝をついた。 「一緒に帰ろう」  灯の目を見返したら心臓がとくとくと脈打った。  昇降口を出て、僕は自宅と反対方向に曲がった。灯に案内されるまま商店街を横切って坂を上ったら、昔ながらの駄菓子屋があった。 「ラムネは好き? 炭酸は飲める?」 「う、うん」  灯はためらうことなくその引き戸を開ける。中学の制服姿でも、店のおばあさんは誰何(すいか)することなく、ラムネを二本売ってくれた。お金は灯が持っていた。  そしてその駄菓子屋の向かい側の、小さな児童遊園に行った。  灯がベンチにラムネの瓶を置いた。瓶の中へ押し込んだビー玉と入れ違いに炭酸が上ってきて、先端の小さな穴から白く泡だった液体が噴き出す様子を僕たちは黙って見つめ、我慢できずに口許をにやつかせながら、上目遣いに互いの目を見た。 「ラムネってエロいな」 「うん。エロいね」

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