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第12話
肩をくっつけて笑って、ベンチに並んで座った。
「『しゅわしゅわする』って言ってた春樹もエロかった」
「恥ずかしい」
「恥ずかしくても、俺は絶対忘れない。今日は人生で最高の日!」
「そうだね」
僕たちはラムネを飲み始めたが、灯がラムネを飲む僕を見て
「春樹、フェラチオしてるみたい。エッロ!」
耳許でそんなふうにからかうから、僕は笑ってむせて、灯がラムネを飲むときに言い返した。
「灯、フェラしてるみたい。エッロ!」
灯も顔や耳を真っ赤にして笑って、さらに僕の耳に口を近づけた。
「今度、春樹とフェラしたい。一緒にしよう?」
「一緒に? どうやって?」
「逆さまに寝るんだよ。シックスナイン。6と9の○が頭の位置」
空中に指で図解してくれて、僕は納得した。
「そういうことなんだ! さっき終学活で小テストの答え合わせしたとき、69っていう答えにざわついてるなって思ったんだ。そんなに難しい問題だったかなって」
「69っていう数字に反応したんだよ。俺、答え間違ってたけど! 高校行かないで就職しようかな」
急に灯は投げやりな口調になって、両足を広げてずるずる滑り、ベンチに沈み込んでいった。
その表情が寂しげで、僕はそういう表情になる気持ちを知っていた。
「落ち着いて取り組めば大丈夫だよ。僕も分数のあたりがやばくて、六年のときに三年まで遡ってやり直した。受験まで時間がないとか、今さら小学三年生のドリルを使うなんて恥ずかしいとか思ったけど、やり直したらわかるようになった。受験はダメだったけど、受験勉強はしてよかったと思ってる。灯も落ち着いて取り組めば大丈夫」
「受験したんだ? 金持ちじゃん」
「違うよ。都立の一貫校だけ受けたんだ。下に二人も弟がいるのに、私立なんて無理だよ」
「学費かあ!」
そう叫んで、ますます灯は沈み込んでいった。下唇を噛んで目を伏せる姿に、僕は一緒に胸が痛くなった。
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