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第13話

「灯、ノートとプリント見せて」 「えー」  灯は明らかに嫌そうな顔をしたが、僕は校章入りのスクールバッグを勝手に開けた。 「俺のノート、ぐちゃぐちゃなんだけど」 「そんなのお互い様だから平気」  プリントは保護者宛のお知らせも、小テストの結果も、全部バッグの底にあって、教科書やノートにプレスされていた。  数学のノートは気まぐれに板書してあったり、数行おきに問題だけ書き写してあったりで、落ち着いて最後まで解いてある問題は少なかった。英語は宿題はやっていなかったけれど、授業中のノートはしっかりしていて、下線や矢印は理解して書き込まれていた。国語のノートはもっときちんとしていて、記号問題もしっかり解けているし、自由記述の問題でも満点をもらっている。 「本を読むの好きなの?」 「うん、まあまあ」  その言葉は謙遜らしく、図書室の利用履歴のお知らせには、たくさん本のタイトルが並んでいた。 「灯は文系なのかもしれないけど、絶対にバカじゃない。数学だって、これからできるようになる」  自信を持って言ったのに、灯は口を尖らせていた。 「俺、マジでバカだし。数学なんか、やる気にもなんねぇよ」  僕は背筋を伸ばし、鼻から息を吸ってきっぱり言った。 「僕の恋人をバカだなんて言わないでほしい。数学は僕ができるようにさせる。いい?」  灯は僕の顔を見て、ぱちぱちと目を瞬いてから言った。 「春樹、かっけー」 「さすが、灯の恋人だろ」  胸を張って言ったけど、ちょっと照れくさくなって、手に持っていた数学のノートをぱらぱらめくった。 「あ、ダメ! 返して」

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