13 / 39
第13話
「灯、ノートとプリント見せて」
「えー」
灯は明らかに嫌そうな顔をしたが、僕は校章入りのスクールバッグを勝手に開けた。
「俺のノート、ぐちゃぐちゃなんだけど」
「そんなのお互い様だから平気」
プリントは保護者宛のお知らせも、小テストの結果も、全部バッグの底にあって、教科書やノートにプレスされていた。
数学のノートは気まぐれに板書してあったり、数行おきに問題だけ書き写してあったりで、落ち着いて最後まで解いてある問題は少なかった。英語は宿題はやっていなかったけれど、授業中のノートはしっかりしていて、下線や矢印は理解して書き込まれていた。国語のノートはもっときちんとしていて、記号問題もしっかり解けているし、自由記述の問題でも満点をもらっている。
「本を読むの好きなの?」
「うん、まあまあ」
その言葉は謙遜らしく、図書室の利用履歴のお知らせには、たくさん本のタイトルが並んでいた。
「灯は文系なのかもしれないけど、絶対にバカじゃない。数学だって、これからできるようになる」
自信を持って言ったのに、灯は口を尖らせていた。
「俺、マジでバカだし。数学なんか、やる気にもなんねぇよ」
僕は背筋を伸ばし、鼻から息を吸ってきっぱり言った。
「僕の恋人をバカだなんて言わないでほしい。数学は僕ができるようにさせる。いい?」
灯は僕の顔を見て、ぱちぱちと目を瞬いてから言った。
「春樹、かっけー」
「さすが、灯の恋人だろ」
胸を張って言ったけど、ちょっと照れくさくなって、手に持っていた数学のノートをぱらぱらめくった。
「あ、ダメ! 返して」
ともだちにシェアしよう!