25 / 39

第25話

「どこまで一緒なの」  JR線に乗る蒲田さんと別れ、僕と鮫島は地下鉄に乗って、さらに同じ駅で私鉄に乗り換えた。その間、鮫島はずっと隣で機嫌よさそうにして、どんな音楽が好きなのかを質問してきたり、リゾートホテルや有料老人ホームの広告を指さしたりした。 「俺、広野台駅です」  それは僕の最寄り駅の隣駅で、その気になれば歩ける近さだ。生活圏が近いことにげんなりしたが、ただひとつの救いは、広野台駅には各駅停車しか停まらなくて、僕の最寄り駅には準急が停まるということだ。 「僕は準急で帰るから、ここで。お疲れ様」 「あ、俺も準急乗ります。石井戸駅から歩いて帰ります。それならあと少し一緒にいられますよね」  結局最寄り駅の改札を一緒に出て、線路沿いの道をしばらく一緒に歩いて、ようやく僕は鮫島と別れることができた。 「おやすみなさーい」  大きく手を振って後ろ向きに歩く鮫島を無視して、なんの目印もない住宅の角を曲がり、ようやく自宅にたどり着いた。 「ただいまぁ……」  マジで疲れた。そう思うときに限って、三男の秋良が僕の目の前に立ちはだかる。 「秋兄ぃ。おもちゃを試したいから、もう一回つきあって! 僕の幸せのためなんだから、できるでしょ?」  弟に甘いと思われるかも知れないけれど、自分がやりたいと思ったことは何が何でも達成しようとする弟に、抵抗するだけ無駄なのだ。諦めは早いほうがいい。 「ん……、灯」  初恋の灯を思い出そうとしたのに、どれだけ目を閉じて乳首をつまんでも、思い浮かぶのは鮫島灯の姿ばかりで、結局僕は鮫島との献身的で甘ったるいセックスを妄想しながら絶頂を迎えてしまった。妄想の中の鮫島は眉間に皺を寄せてセクシーだった。 「最悪」  翌朝、僕はシャワーを浴びてスーツを着て、朝食の味噌汁だけは頑張って飲んだが、鮫島との行為を妄想してしまったショックはまだ残っていた。 「自分の部下を見るだけでも手一杯なのに、さらに鮫島の相手なんて無理」  出社する気になれず、階段に座って、スマホで勤怠管理表を見た。昨年システムのリニューアルであちこち飛び回ったので、代休も有給も消化をうながす赤字で表示されていて、休みたいと言えば、快く休ませてもらえるだろう。 「ニャア」  出窓に座るフユに見下ろされて、僕は正直に打ち明けた。 「会社に行きたくないよう」

ともだちにシェアしよう!