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第35話

 滑らかな舌に乳首を転がされ、僕は胸から全身にしゅわしゅわが広がるのを感じた。  鮫島の熱い手が髪から耳、頬を滑り、肩を撫でて、口に含まれていないほうの胸の粒をつまむ。 「ああっ」  快感に震える僕を鮫島が握ってくれて、僕は安心して全身に広がるしゅわしゅわを楽しんだ。  片手を繋いだまま、手と口で身体中に愛撫を施してくれて、蕩けきった僕は素直に脚を開く。  鮫島は僕の表情を読み取りながら優しく蕾を撫でて、僕が焦れるのを根気よく待った。 「来て、鮫島」  僕の言葉に柔らかく頷いて、鮫島は侵入してきた。指とは比べものにならない質量に押し広げられ、満たされていく。強い快感から逃げてずり上がる僕を引き寄せて抱き、ゆるゆると腰を使う。 「んっ、んっ……あ……、はぁん……」 「春樹。しゅわしゅわする?」  鼻先で僕の髪を掻き分け、耳を甘噛みしながら訊かれて、僕は素直に頷いた。 「ん……、しゅわしゅわする。きもちい」  なんで鮫島は僕がしゅわしゅわするって知ってるんだろう。無意識のうちに口走ったのかな。  肌の温もりと湧き上がる快感で思考はまとまらず、そのうち鮫島が疾走を始めて、僕は翻弄された。何度もひとりで絶頂させられて、力の入らない腕を鮫島の首にからげ、揺さぶられた。 「や……っ、またイク……」 「何度でもイって、春樹。俺も一緒にイっていい?」 「ん。来て。鮫島も来て」  脳みそを掻き回されるように深く強く穿たれて、僕は振り回してからビー玉を落としたラムネみたいな強い絶頂を味わった。ほぼ同時に達した鮫島の顔は眉間に皺が刻まれてセクシーだった。  欲が抜け、砂浜に打ち上げられた人魚のように力なくベッドへ身体を横たえて、冷めていく頭と身体が今の状況を分析する。異動してきたばかりのろくに知らないヤツと、行きずりのようにセックスをした。数時間後には出勤して、僕はまた蒲田さんの目の前に座る。僕はどんな顔をしたらいいんだ。 「考えないで。思考を停止してください」  大きな手で目を塞がれた。真摯な声が耳を埋める。 「宇佐木さん、何も考えないで。後悔も憂鬱も自責も、全部俺が引き受けます。あなたはただ気持ちよかった、すっきりしたと思ってください。そしてまた自慰をする手段として俺とセックスしてください。俺はあなたのディルドです」 「自分の事をディルドだなんて、すごいことを言うんだね」 「あなたを満たすためなら、簡単に自分を投げ出せるくらい惚れてるんです。でも今は、俺の気持ちも負担になると思うので言いません。俺のことは、ただ便利に使ってください」  炭酸の粒がひとつだけはじけるような優しいキスを落とされ、しっかりした胸に抱かれて、僕は疲れた身体を鮫島に預けたまま眠りに落ちた。

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