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③ 4月1日

小学6年の夏休み明けに転校してきたリョウは、不思議なことにそれからずっとハルトと同じ学校、同じクラスだった。 初めて公園で会ったあの時から、ハルトはずっとリョウが気になっていた。 あの日以来、夏休み中に公園で見かけることはあっても、ふたりがちゃんと話すことはなかった。ハルトはリョウの名前を転校初日の黒板で知った。 ハルトは昔から何もしなくても人を引き寄せるタイプで、いつも自然とクラスの中心にいた。 対してリョウは大人しく、自分の世界を持っていたからクラスでは地味な方だった。 そんな棲み分けなんか関係なく、気になるなら仲良くすればよかったのに、思春期のハルトにはその隔たりが越えられなかった。 そうこうしているあいだに時間は流れ、ふたりは高校1年生になった。リョウがどこの高校を受けるのか、ハルトはついに聞けなかった。 だから高校の入学式で、人混みに流されるリョウを見つけたときは嬉しさのあまり声をかけた。 「あ!リョウ!」 まるで今まで友達だったかのように親しげに名前を読んだ後、ハルトはあっと後悔した。リョウは自分のことなんて、認識してないかもしれないのに。 案の定振り返ったリョウは首を傾げて、それでも「はると?」と聞いた。 名前を知っていた!ハルトはそれだけでその日は最高の日だと思うくらい嬉しかった。 これをきっかけにもっと話せるようになれば、と思ったのだが、そうすんなりとはいかなかった。 やはりハルトは目立って、新しい環境でもあれよあれよと人気者になった。 運動神経が良いことがバレると、あちこちの部活から助っ人に頼まれるようになった。 はじめの頃こそ一緒に下校していたのに、いつのまにかリョウは先に教室を出るようになった。

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