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第2話
そんな話をしたのは二週間前。
あれから市村と話が出来ないまま、日常が過ぎ去っていく。
「すぐに戻るから、少しだけ待ってて。」と市村が最後に告げた言葉。
俺も俺で整理する時間が欲しくて、二つ返事で頷いたのだが……ほぼ毎日顔を合わせていた分、二週間と言う期間はとてつもなく長く感じる。
一緒に出社していた朝は時間をずらされ捕まらないし、同じ会社と言えど部署が違えば会う機会を見つけられない。
少しだけっていつまでなんだろう?
明日?明後日?来月?それとも……。
「……どれだけ待てばいいんだろ。」
「――お預けでも食らってるんですか?」
口から零れ出た言葉に、透かさず返答があった。
隣のデスクに座り、慣れた手付きでPCを操作する三つ下の後輩だ。
「俺、今口に出してた?」
「思いっきり。」
淡々と仕事をこなす横顔に溜め息が落ちる。
「そうか……。」
「そんな欲求不満丸出しの溜め息つかないでもらえます?」
手を止めた後輩が眼鏡の奥の呆れ眼を向けて、デスクの上の紙束を俺へと突き付けた。
「仕事溜まってんですよ。」
「ああ、悪い。」
「で?何なんです?」
興味があるのかないのか分からない後輩は、既にPC作業に戻っていた。
「うん……守里 はさ、仮に好きな奴に振られたとして、その後も友人として付き合っていく為に立ち直る時間ってどのぐらい必要?」
「え、振ったくせに友達でいたいとか鬼ですか?先輩って見掛けに寄らず結構最低なんですね。」
グサッと胸を一突きされた気分……。
「うっ……やっぱ最低か?」
「最低ですね。ちなみに僕は気持ちが知られた相手とその後も友人関係でいようとは思えませんね。時が経てば解決するものでしょうが、数年は掛かると思います。」
数年………。
そうだよな、普通。
「俺って最低だよな……。」
「鬱陶しいなぁ。大体、そこまでして友人関係を続けたいんですか?」
「まあ……大切だと思うし。」
「でも好きじゃない?」
「今まで友情の括りにいたんだ、そもそもそんなこと考えたこともなかった。」
「ふーん、じゃあ今は?」
悪なき問いに言葉を見失う。
そうだ、今は…………今、俺はどう思っているんだろう……。
「分からない………。」
「そんなんで先輩の方が友人関係に戻れるとは思いませんけどね。」
やれやれと肩を竦めた後輩に、俺は何も返せず、モヤモヤとした感情だけが胸を渦巻いた。
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