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第8話
雨。俺は、窓の外を眺めていた。
どんよりした雲に覆われた空は晴れそうにない。
昼、どこで食べようかな、、、、、。
と、思っていたらチャイムが鳴った。
「やっぱり、ここだな」
来たのは、前に昼寝した屋上の扉の前のスペース。周りに、人の気配はなく、ただ、雨の音だけが響いている。
俺は、階段に腰をおろして弁当の蓋を開けた。今日は、珍しくおじさんの弁当だ。俺の作る弁当違って色鮮やかだ。
「ん、うま」
俺は、おじさんの弁当を綺麗に食べ終えると、今朝購入したファッション雑誌をひろげた。
んー、新しい服とか欲しいんだよね~。
「あ、このワンピース可愛い、、。あ、このイアリングみたいなのほしいな~…」
「、、、、、、。」
「金がねぇー。」
欲しい服もあるが、夏にはアニメのイベントなどがある。どっちにせよ、お金が足りない。
バイト、探すか~…。
「やっぱ、女装してない方がいいよなぁ」
「その方がいいと思うよ」
「あ?」
声がした方に目を向けると、階段の先に俺にブスと言ってきたモテ男がいた。
「げ。」
「こんにちは。日谷、愛くん?」
キラッキラした笑顔で階段をのぼってくる。俺は、即座に立って階段を急いで降りた。
なんか、やばそうだから、自然にすれ違おう、、、。自然に。
彼の顔を見ずに隅の方で降りていると、
「待てよ。ぶす」
腕をつかまれた。
んんん?こいつ、ブスって言ったよな。二度も、本人の前で、、。
「な、なんですかぁ~?ぼく~急いでるんですけど~。」
怒ったら、絶対相手の思うつぼだ。
俺は笑顔で振り返ると、ばっとスマホを見せられた。
スマホに映し出されているのは俺だった。しかも、スッピン。ちょうどここで寝ていた時の写真だ。
俺は、固まったまま画像を見ていた。
「これ、お前?」
「へ?」
俺は、冷や汗をかきながらも笑顔を保った。
「違うよ~。僕~もっと可愛いもん!」
ニコッと笑うと俺はつかまれた手を無理やり外し、急いで階段を下った。気味が悪いくらい手が冷たくなっていた。
「勘弁してくれよ、、、。」
俺は、深くため息をついた。
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