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第10話

バイトを初めて2週間。 「いらっしゃいませ」 「二名様ですね。こちらの席にどうぞ。」 俺は、笑顔で接客をする。いつものワインレッドのジレに、ハーパン、、、もちろんスッピンだ。女装をしていないと落ち着かないが、仕事だから仕方がない。 「ねぇ、あの子可愛くない?」 「分かる!中学生くらいに見えるよね」 店に来る客は俺を見ると、ひそひそと話していた。 はいはい、どーせ似合ってませんよ。 「愛くん。ゴミ捨ててきて!」 「あ、はい。」 休憩前。店員の木羅さんに言われ、大きなゴミ袋を持ち、俺は裏口にでた。 ここの女性は、気が強くて苦手だ、、、。 しかも、男の店員が店長の秋二を除いて俺だけなので、いつも力仕事を任される。 そんなに運動をしない方なので、いつも腕が痛い。 「よっこらせ」 店の裏口を出て、重いゴミ袋を置くと、近くに黒いものが動いているのがみえた。 「?」 よーく見ると、それは黒猫だった。ゴミ袋を破いて生ゴミに口をつけている。 「こら!」 と、言っても少し顔をこちらに向けただけで何事もなかったように生ゴミを食べ始めた。 首輪がつけてあるので、どこかの家の猫だろう。毛並みも綺麗だし、汚れてない、目も綺麗だ。 「こんなの食べちゃダメだろ」 俺は猫を抱いた。広い道に出て、生ゴミを食べないように黒猫をゴミ袋から離す。 すると、 「レオン。」 と声が聞こえたほうに猫が俺の腕をすり抜けて声の主の足にすりよった。 か、可愛い、、。 いや、そんな事より、 「飼い主なら、もう少し猫の世話をしっかりしな、、、、、、、」 「猫ちゃん?」 黒猫から視点を変えると、そこにはモテ男がいた。休日なので、とてもシンプルな服装なのに様になっている。 な、なんで!?と、と、とりあえず、バレないように、、、。 「じゃ、俺はこれで」 さらっと、店に戻ろうとすると、グイッと腕を引っ張られ、そのまま路地裏に入った。 「ちょっと!!」 ドン! 「ひっ!」 腕を掴んだまま、壁ドンされた。片腕が、動かない状態。俺は、ただただ恐怖で足が震えていた。 深い青色をした目で、俺をジッと見つめてくる彼は、無表情のままだ。 「あ、、、あの、、、、、」 彼の顔が近づいてくる。 ヤバイ。考えろ、思い出せ!女装の時に、変なやつに絡まれたらの対処法は、、、、、。 「っ、、ふん!」 俺は勢いよく相手の急所を蹴った。 「ぐっ」 相手が俺の片手を離し、うずくまった。イケメンの顔が酷く歪んでいる。 俺は、ざまぁと思いながら、すぐ傍にあった店の裏口に入った。 安心して、へろへろとその場に座りこむ。 「クソ怖かった…。」 あのまま顔を近づけられていたら、、、、、絶対、写真の奴だってばれてたかも知れない。あの写真、あのモテ男が以前見せてきた俺は目を閉じていたので、顔をしっかり確認しときたかったんだろう。 きっと、SNSとかで、バカにしたいんだろうが、俺はそんな手にはのらない。 フフ、甘かったな、モテ男。 上を見上げ、薄笑っていると、 「愛くーん、休憩終わったよ。」 「あ、すいません。すぐ行きます。」 木羅さんに呼ばれて、俺は立ち上がった。 あれ? 俺は、胸に手を当てた。安心してから時間がたったのに、、動悸が、、、。 て、そんなわけないよな。さ、仕事仕事。

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