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第11話 番外編 須美先生の悩み

「はぁ」 昼。俺は、理科室を前にして溜め息が出た。 今日も、あいつの面倒見なきゃいけねーのか。 俺は、白衣のポケットに手を入れて、ガラっと扉を開けた。今日は、爽やかすぎる快晴。窓の外に見えるのは、肩の長さまである黒髪の生徒の後ろ姿。 「日谷。お前、また来たのかよ。」 黒髪の生徒は後ろを振り向く。くりっとした黒目に整った顔立ち。端からみたら黒髪の美少女。だが、俺はそんなこと全然思わない。 「よ!俺の使用人!」 何故なら、こいつはクソ生意気なガキの男だからだ。メイクをとりゃ、奥二重の小さい黒目の茶髪、まぁ女子の言う塩顔か凡人顔って感じで、今の姿とは正反対だ。 「誰が使用人だ。」 「いて。頭殴るなよ。訴えるぞ!」 「はいはい。、、、、つーか。お前、秋二の店で働いてるってマジか?」 「は?誰に聞いた!まさか、おじさんか?」 「ちげーよ。秋二本人から画像が送られてきたんだよ」 「あの野郎~。」 日谷が空の牛乳パックを握り潰して、ふるふる震えている。美少女顔が台無しである。 そんなことよりも、 「なんで、陽一に黙ってるんだ?」 「うぐっ!」 「一応、お前の担任だし、相談にのるぞ」 優しく頭を撫でると、そっぽを向いた日谷は、その場に座り、少し間を置いてから口を開いた。 「ほら、俺って、、、置いてもらっている身だし、自分のわがままでおじさんに無理に金を使って欲しく、ない、て言うか」 やっぱりそこか。 日谷は、昔から一人で抱え込む癖がある。それは、陽一に引き取られてから、さらに多くなり、あまり自分のことを人に話さなくなった。 だから、こうして俺に吐かせるようにしている。それが、俺にできることだ。 「それと、、、、。」 「それと?」 「家での俺が、嫌い、だから。」 と、言いポツリと 「怖いんだ。」 と言った。 「日谷、、、、。」 「ていう、先生は、なんかないの?悩み。」 日谷は、これ以上話したく無いのか急に話題を変えた。 悩み、悩みかぁ。 「あー、生徒に告白された、ぐらいかな」 「くっ、これだから顔の良い奴は、、、。この腹黒教師。」 「人の事言えんだろう、お前も。と言うか、教師が生徒に告白されるんだぞ、変な断り方したら絶対訴えられるんだから、いつも胃が痛むぞ。」 「へーへー、どうせだったら腹痛で休んでくれても良いのになぁ~…。」 「先生は、まだ若いから元気です。残念だったな。」 「けっ!もう教室戻るわ」 「おう、じゃあな」 日谷は、ぶつぶつ良いながら立ち去っていった。急に静かになり、ざーっと木々が揺れる音だけが聞こえる。 「悩み、ねぇ」 そう、俺は告白された、先日、3年の 男子生徒に。 「言えるわけねぇーだろ」 俺は、深く溜め息をつき、ポケットに入っている飴を舐めた。

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