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第3話 こころづく②

中間テストはあっという間に終わった。 五月にわからないところを教えてもらったのもあり、進の出来はまぁまぁだった。 どうやら五月が前に通っていた学校はここよりレベルが上らしい。 それなのになんでこの学校に転校してきたのだろう・・ 勉強を教えてもらっている最中、そんな疑問が進の頭で浮かんでいた。 テスト最終日のホームルームで担任から話があった。 「テストが終わったばかりだが、次はもうすぐ文化祭だ。来週には文化祭委員とクラスの出し物を決めるからな、なるべく部活動入ってないやつ、協力してやるように」 進は去年の文化祭を思い出していた。 あれから一年。 もう、大丈夫。 今年は何事もなく過ごすのだろう。 次の週の昼休み、五月が購買で買ったおにぎりにかぶりつきながら言った。 「進ちゃん文化祭委員やらね?」 「やらね。向いてないもん」 進は迷わず答えた。 「即答かよー、俺クラスのなっちゃったんだよねー。進ちゃんもやってくれたら嬉しいんだけどなぁ」 「は?!転校生が何でいきなり?」 「別に転校生ったって去年前の学校でやったし、そんなに変わらないだろ?文化祭委員やっとくと内申書上がるし?」 「お前、そんなこと考えてたのか」 進は五月が既に受験のことを考えていることに驚いた。 「それに聞いたらさ、文化祭委員って当日は校内見回りでクラスの出し物にはあんまり参加しなくていいんだって!だからさ、進ちゃんも委員なったら文化祭一緒に見て回れるじゃん」 「えー・・でもそこにいくまでの準備がめんどいだろ」 「そっかな?委員って自分で意見出さなくていいし、みんなの意見まとめるだけだし、準備も自分のやりたいように指示すればいいし結構楽だぜ」 「それが、向いてないんだっつーの。まとめるのも指示するのも苦手なんだよ」 「大丈夫だって!やろうよ進ちゃんー!なんかあったら手伝うし!」 五月は両手をパンと顔の前で合わせると、拝むようなポーズで進に迫った。 「・・少し・・考えるよ・・」 すごい勢いでお願いされ、進は迷い始めた。 その週の金曜日、いよいよクラスの文化祭委員と出し物を決める日になった。 女子の委員は決まっていたが、男子の委員を立候補する者が誰もいなかったためギリギリになってしまったのだ。 放課後残っての学級会に、クラスからは早く帰りたい、部活に行きたいと言う重い空気が流れていた。 そして部活動やバイトをしてない人物に白羽の矢が立つのは目に見えていた。 このクラスでそれに当てはまる人物は数えるくらいしかいない。 進は五月の言葉を信じ、周りから責められる前に自ら立候補をすることにした。 もちろん他にやりたい人物などいなかったので進は委員にすんなりと決まった。 そして進は自らアイデアを出した。 「出し物だけど・・提案があるんだ。アイス屋はどうかな?アイスチェーンの店が文化祭用の貸し出ししてるらしくて結構簡単にやれるんだって」 これは前日の五月のアドバイスだった。 進のクラスは文化祭にやる気が無さそうだから簡単にできるやつがいいと言われた。 そして五月が前の学校でアイス屋をやってるクラスがいたことを教えてくれたのだ。 五月の予想どうり進のクラスはあまり文化祭にやる気はなかったため、進の提案でどんどん話は進んでいった。 これならやっていけそうだ・・ 思っていたよりも皆協力的で進は安心した。 クラスの話し合いが終わった後、もう一人の文化祭委員の石橋と教室に残って提出用紙を書くことになった。 すると廊下に面した窓をガラッと開け五月が明るい声で話しかけてきた。 「おつかれ進ちゃん!本当に文化祭委員やってくれたんだなぁ!サンキュー!」 「別にお前のためじゃない・・」 進はシャープペンシルをカチカチと鳴らしながら横目で五月を見た。 「終わるまで待ってるよ!終わったら連絡して。どっかで時間潰してるわ」 五月はそう言うと廊下をたらたらと歩いていった。 「鵜飼君、今の人隣のクラスの転校生だよね?仲良いんだ?」 五月がいなくなった後、石橋が興味津々といった感じで聞いてきた。 「まぁ・・体育とかで一緒になって」 「へぇー。結構カッコいいってうちのクラスの女子でも話題になってたよ。なんかノリ良さそうだし!付き合ってる子とかいるの?」 進はドキリとした。 「いや、今はいないって言ってた気がするけど」 「本当?そうなんだぁ。喜ぶ子いるだろうなぁ~」 「・・・」 五月と自分は仲の良い友人だ。 恋人ではない。 だから付き合ってる人はいないというのは嘘ではない。 でも・・ 進はなんだか居心地の悪さを感じて無言でシャーペンを動かした。

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