6 / 26
第4話 文化祭の前①
文化祭まであと一週間にせまった放課後。
文化祭実行委員の会議があった。
「今日何決めるんだっけ?」
進はもう一人の文化祭委員の石橋と会議場所へと向かった。
「前日の設営準備の分担じゃないかな?」
「あぁそっか。準備の日天気良いといいなぁ。雨だと設営大変そう」
「ね、門の装飾とか去年すごかったんもんね!」
石橋とそんな会話をしながら進は会議場所に指定された多目的室の扉を開けた。
すると、その瞬間扉から向かって左側に用意された机に座っている清瀬の姿が目に入った。
部活着のまま座っている。
『え?』
進は驚いて目を見張った。
清瀬も進に気付き少し驚いた表情を見せている。
「何年何組か言ってください」
中央に位置する机に座っていた生徒会長が、進達に声をかけてきた。
「あ・・二年F組です」
「文化祭委員はこちら側の空いてるところに座って下さい」
机は生徒会長が座っている席を真ん中に、コの字型に並べられている。
会長は清瀬が座っている机とは逆側に並べられている席を指した。
進は清瀬の方は見ないようにして、そそくさと案内された方の席へ向かった。
それからゾロゾロと人が集まりだした。
各クラスの委員と、部活途中のような生徒も入ってくる。
みんな運動部だ。
清瀬は隣に座った野球部の生徒と話している。
「だいたい集まったかな。では始めます」
生徒会長がスマホの画面で時間を確認しながら言った。
五月のクラスまだ来てないな・・
進はチラリと周りを見廻して思った。
「今日は文化祭で係りを手伝ってもらう運動部の部長に来てもらってるので、先にそちらの分担決めをします。それから文化祭委員の皆さんは前日の設営準備の説明と役割分担を決めます」
生徒会長は書記がホワイトボードに書いていく内容を確認しながら説明する。
なるほど、だから清瀬がいるのか。
そう思っていた時、勢いよく扉が開いた。
「すみませーん遅れましたぁ」
そう言って五月ともう一人の委員の女子が一緒に入ってきた。
「何組ですか?」
生徒会長が少し怪訝そうに聞く。
「二年E組でーす」
しかし五月はヘラヘラとしながら答えた。
「次からもう少し早く来てくださいね。こちら側の空いてるところに座って下さい」
「はーい、すみません!」
「もう乾がギリギリまでやってるから!」
五月の隣にいた女子が五月を肩でこずいた。
「悪かったって」
そして二人でコソコソと話ながら進達の方へやって来る。
五月は進に気付くと、笑いながら肩をポンと叩いて少し離れた空いてる席に座った。
その様子を清瀬は反対側から見ていた。
進が文化祭委員をやってることにも驚いた。
そういうことを積極的にするタイプではないはずだ。
それからあいつ・・
先日進と一緒に帰っていた人物。
進とは違うクラスだったのか。
親密さが伝わってくる。
一体いつ仲良くなったのだろう・・
「じゃぁ運動部のみなさん前に出てクジ引いてくださいー」
文化祭の実行委員長がそう言うと、運動部の部長達がゾロゾロと前へ出てクジの前に並んだ。
五月の隣でその様子を見ていたもう一人の実行委員の高岩が小声で呟いた。
「あ、清瀬くんだ。久しぶりに見たな」
「清瀬?」
五月は聞いた。
「うん、あの3番目に並んでる子。中学一緒だったんだよね。今バスケ部の部長やってるみたい」
「ふーん」
五月は高岩が言った通り三番目に並んでいる男子に目をやった。
その顔は、つい先日初めてその存在を知った顔だ。
清瀬、この間進といる時睨んできた奴か・・
「どんな奴?高岩仲良かったの?」
「2年間同じクラスだったから普通かな〜。清瀬君良い人だよ。真面目だしバスケうまいし優しいし、派手じゃないけど密かに好きな女子も結構いたと思う」
「へー・・」
五月は少し面白くない気持ちになった。
「でも今は同中の一宮さんと付き合ってるって聞いたよ。一宮さん中学の頃からバスケ部のマネージャーしててさ、清瀬君のこと絶対好きだと思ってたもん」
「へぇ・・」
彼女がいるのか・・
ならあの時、俺を射るような眼で睨んできたのはなんだったのだろう・・
五月はすました顔で並んでいる清瀬をじっと見つめた。
ともだちにシェアしよう!