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第6話 文化祭一日目①
文化祭一日目は在学生だけの日となっている。
二日目の一般公開の日のための練習にもなっているのだ。
そのため、全体の雰囲気は緩くトラブルは少ない。
進は午前十時から十二時まで見回りの係りになっていた。
五月も同じ時間で見回りの係になっているので今頃どこか校内をうろついているのだろう。
進は校内を歩きながら昨日の清瀬の言葉を思い出していた。
あれからどんどんと人が集まり忙しくなったため清瀬と関わることはなく終わった。
清瀬は、一宮と別れていた。
昨日の言動を考えると、清瀬はまだ自分のことを想ってくれている・・
進はそう思うと胸がギュッと締め付けられるようだった。
しかし同時に、だからと言ってどうにも出来ないと思う気持ちもあった。
清瀬と俺ではダメだった。
周りが見えなくなった。
またあんな状態になるのは嫌だ。
恋人という関係には俺達は向いていない。
そんなことを進はボーッと考えていた。
すると、向こうから五月が来るのが見えた。
途中途中で他の生徒と喋りながら歩いている。
明るい笑い声がここからでも微かに聞こえてくる。
五月・・
五月との関係はどうするのだろうか。
今は友人だ。
友人以上のことをしているが、友人として一緒にいる。それは進も五月も認識は一緒なはずだ。
なぜ、五月はあんなことに付き合ってくれるのか。
五月は男が好きだと言った。
ちょうど良い性欲処理。
それが一番しっくりとくる。
お互い本気にはならない間柄。
でも・・もし五月に恋人が出来たら??
そう考えた瞬間、進の胸がチクリと痛んだ。
そして、その痛みを感じた自分の傲慢さに気持ちが沈んだ。
五月は俺のものじゃない。
「進ちゃん~!」
五月がニコニコとしながら駆け寄ってきた。
「・・おう。」
進は少し気まずい気持ちになりながらも、それを悟られないように答えた。
「いやー一日目はやっぱり平和だね!明日がこわいわぁ」
五月は腰に手を当てながら話す。
「本当にな、何事もなく終わると良いけど」
進も笑いながら答えた。
「まぁ、文化祭で何も起こらないってことはないって先輩言ってたけどね~。怪我人とかは出ないといいけど」
「・・そうだな」
進は五月の横に並んで廊下にもたれ掛かった。
「・・進ちゃん」
すると五月が小さな声で進を呼んだ。
「何?」
進は五月を見上げた。
「うん、あのさ、明日文化祭終わったらさ、ちょっと話せない?」
「明日?今話せないことなのか?」
「文化祭は、楽しい気持ちで過ごしたいじゃん??」
「・・と言うことは、楽しくない話する気か?」
進の問いかけに五月は苦笑いをした。
何だろう、なんだか嫌な予感がする・・
でも・・何かを五月が決めたのならそれをちゃんと聞いて受け入れなければいけない。
五月と俺は「ただの友達」なのだから。
進は微かに騒ついた感情を収めるように、自身に言い聞かせた。
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