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第6話 文化祭一日目②
見回りの当番が終わった後、進と五月はそれぞれクラスの様子を見に行き、その後体育館で待ち合わせた。
ちょうど軽音楽部の演奏が始まる時間だ。
五月はちょくちょく軽音楽部に顔を出しているらしくメンバーと仲が良い。
体育館に並べられたパイプ椅子の一番後ろに二人で座った。
「進ちゃん、この歌知ってる?」
五月が小さな声で聞いてきた。
今軽音楽部が演奏しているのは、メジャーなバンドのポップで明るい曲だ。
ただ進は聞いたことがある程度で、歌詞の内容などは気にも止めたことがなかった。
「知ってるけど、ちゃんと最初から聞くのは初めてかも・・」
「そっか。俺この歌すごい好きで、これ演奏して欲しいって軽音楽部の友達に頼んだんだよね」
「・・まじか。お前部員じゃないのに図々しいな・・」
「みんな快くオッケーしてくれたよ!部内でも人気あるんだってこの歌!」
「ふーん・・」
「この歌聞いてると、進ちゃん思い出す」
「はい??」
「・・なんてね」
五月がそんな風に思わせ振りに言うものだから、進はどんな歌詞だろうと真剣に聞くことにした。
でも、その歌は明るい曲調とは裏腹に別れを思わせる内容だった。
別れても頑張って生きていく、そんな内容だ。
この歌詞を聞いて俺を思い出す?
進は先程の五月の『話がある』という言葉がますます不安になった。
暗い体育館で五月と肩を並べなから、明るい別れの歌を聞く。
この瞬間はいつか、良い思い出になるのだろうか・・そんなことを進は考えていた。
その後プラプラと他のクラスの模擬店を回り、一日目は無事に終わった。
進は家に帰ってから、改めて今日軽音楽部が演奏していた歌を聞いてみた。
その歌の歌詞はまるで物語のようで、その情景が浮かぶようだった。
五月はこういうのが好きなのか。
なんか意外・・
五月と仲良くなって、まだほんの数ヶ月だ。俺はあいつの何を知っているのだろう。
そう言えば、転校してきた理由・・
一体五月はこの学校で何がしたかったのだろうか。
明日、聞いてみようかな。
もう少し、五月のことをちゃんと知りたい。
五月からの話がある前に、聞けたら聞いてみよう。
その後もし、この歌のように別れの話になったとしても・・
進はゴロンとベッドに寝転び目をつむった。
進はその夜、初めてそのバンドの様々な曲聞きながら眠りについた。
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