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第7話 文化祭二日目③
「捻挫はしてないけど、一週間くらいは無理しないようにね」
そう言うと、養護教諭の女性の先生は清瀬の右足首に湿布を貼った。
「はい、すみません。ありがとうごさいます」
清瀬は小さくお辞儀をしてお礼を言った。
「じゃあ、せっかくの文化祭なんだから戻って楽しんでおいで」
先生は優しく微笑んだ。
保健室の外の廊下からは、まだ文化祭の盛り上がっている音が聞こえてくる。
しかし進の気持ちは沈んだままで、とてもそんな気分にはなれなかった。
「失礼しました」
挨拶をして保健室の扉を閉めると、清瀬はチラリと進を見て言った。
「進、大丈夫だから・・」
しかし進は首を横にふって小さな声で言った。
「・・本当にごめん・・清瀬には部活もあるのに、俺の不注意で・・」
進は血の気のない顔色をしている。
清瀬はそんな進を見ると、ふーっと息を吐いて言った。
「じゃあさ、とりあえずどっかで休まない?少し進と話したいんだ」
進は清瀬の顔を見た。
清瀬はニコリと笑っている。
いつもの穏やかで優しい清瀬だ。
「・・わかった」
進はしっかりと清瀬の目を見て答えた。
清瀬から逃げてばかりいたらダメだ。
進は覚悟を決めた。
思えばこの一年弱、ずっと清瀬を避けてきた。その存在が目に入っても気付かないふりをした。
きっと本当は、もっと責められてもおかしくなかったのに・・
それをしてこない清瀬に甘えてきた。
それどころか、今もこんな自分を守ってくれようとする。
俺は、清瀬に何を返せるだろう・・
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