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第8話 やり直し②
ファミレスで会計を済ませ、来た道を戻りながら歩いていくと駅前の人はすっかりまばらになっていた。
二人は学校の最寄駅ではなく、隣の駅まで一駅分歩きながら話した。
手は繋がない。
どこからどう見ても、ただの男子高校生が二人で歩いているだけだ。
もう少しで駅の改札が見える、その時だった。
清瀬は進の腕をグイッと引っ張った。
そこはちょうど曲がり角になっている人気のない住宅街へ続く道だった。
「清瀬・・?」
進が清瀬の方へ振り向こうとした、その時だった。
清瀬は自身の腕を壁にもたれさせて進を隠すようにして、進の唇にそっとキスをした。
それから清瀬は一瞬口を離し、進に視線を向けると再びグッと唇を押しつける。
今度は深くて重い、そして熱をはらんだ口づけだった。
「・・っう」
進は上手く息ができず、重なった唇の隙間から声を出すようにして呼吸をした。
それからしばらくして、ゆっくりと清瀬は唇を進から離した。
進は少し怒った表情で清瀬を見つめて言った。
「清瀬、こういう事、外じゃ・・」
「ごめん。さすがにずっとキスも出来てなかったから・・我慢できなかった・・」
清瀬は目を伏せながらも、穏やかそうに笑って言った。
「・・・」
進はどう答えて良いか分からず下を向いて黙った。
「この続きは、今度の休みにね・・じゃぁ、帰ろうか」
清瀬はそう言うと、鞄からICカードを取り出し改札の方へと向かう。
進はその背中を見つめながら俯き加減で後をついて行った。
この続き・・
わかっている、付き合うことにしたのだから・・
そう言う行為を再び清瀬とする日がくるのは、自然の流れだ。
わかっているけど・・
進はギュッと鞄の持ち手を強く握った。
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