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第8話 やり直し③

金曜日、昼休みを知らせるチャイムが鳴ると進は弁当を片手に屋上へと足を運んだ。 屋上に通じる扉を開けると、すでに紙パックのジュースを飲みながら外を眺めている五月の姿が目に入った。 「おまたせ・・」 進が声をかけると、五月は振り返りニコリと笑った。 「おう!お疲れ!」 清瀬と付き合うことになった後も、週に一回は五月と昼食を取っている。 お互いのクラスでのたわいのない話をしあうためだ。 「さすがに寒くなってきたよな〜。屋上で食べるのそろそろキツいかもね」 そう言う五月の鼻は少し赤くなっていた。 もうすぐ十二月だ。 確かに外で食べるにはキツい季節だ。 「どっかいいところないかなぁ。教室で食べるのはなんか落ち着かないよね、進ちゃん?」 「うん・・そうだな」 進はパクリと卵焼きをかじりながら答える。 他にいい場所はないか考えてみたが、人目につかない場所となるとなかなかない。 すると五月はぼんやり考えている進の思考を読んだのかこう言った。 「・・あのさぁ、進ちゃん清瀬君に俺と昼食べてる事、言ってないでしょ?」 進はギクリとした。 「え・・なんで?」 「いや、別に。なんとなくさ。俺と昼食べてるところ清瀬君に見つかるのはまずいから人目につかない場所の方がいいのかなって」 「・・・」 以前、一度だけ清瀬に五月の話題を出した時があった。 しかし清瀬は明らかに面白くなさそうな顔をしていた。 それ以来清瀬に五月の話題はふらないようにしている。 「黙んないでよ。俺は進ちゃんと食べれるの嬉しいし。清瀬君の事気にして、もう俺と昼食べれないって言われる方が悲しいじゃん?」 「・・うん」 「俺達、もうただの友達なのにね」 五月がなんのことなしに言った言葉。 でも、その言葉は進を苦しめるものだった。 五月とはただの友達に戻った。 でも、元々がただの友達ではなかったのだから最初の形がわからない。 今俺達はただの友達だと堂々と言えるのだろうか。 きっと清瀬に五月とはただの友達だと言っても信じてもらえないだろう。 清瀬とは恋人に、五月とはただの友達に。 でも、この二つは同時に行ってはいけなかったのではないだろうか。 どちらとも関係を繋げておくのは、間違っているのではないだろうか。 答えの分かっている自問自答を進は心の中で呟いた。

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