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第9話 決断①

「進、何か飲み物でも買っていく?」 清瀬は進行方向にコンビニが見えたので進に問いかけた。 「いや、平気」 進はそう言うと清瀬の隣を並んで歩き続ける。 今日は約束のデートの日だ。 二人で何をしようか考えて、映画を見ることにした。 以前付き合っていた時にはしなかったことだ。 清瀬はチラリと進を見た。 今日、進はどんなつもりでやってきたのだろう。 ただ映画を見て終わるつもりではない事は、進でもわかっているはずだ。 そう、終わらせるつもりはない。 再び付き合い始めて一か月。 まだ、進と寝れていない。 でもそれは二人で決めた事だ。 以前のように、性欲だけに溺れてしまわないよう、節度を守ってゆっくりと付き合っていこうと。 でも・・ 『ただの友達』と言っている乾 五月の存在が清瀬は不安で仕方がなかった。 進にとって、他の友達と一緒ではないことは明らかだ。 進は誰ともでも親しくできるタイプではないことを清瀬は知っている。 そんな中で進があんなに心を許して話している相手は初めてだった。 そして、何よりあいつは言った。 進が好きだと。 そのことを進が知っているのかはわからない。 でもこうして、もう一度自分の告白に答えてくれた。 少なくとも今選ばれたのは自分なのだ。 この選ばれている間に、もう一度ちゃんと進と結ばれたい。 そして繋ぎ止めたい。 あいつと、今後何かあったとしても大丈夫なように・・ 映画は話題の洋画にした。 激しいアクションや予測不能の展開に二人とも夢中になって、二時間ほどの上映時間はあっという間に終わった。 「面白かったな!久々に映画館きたけどやっぱり迫力が違うし!あそこのさ!過去の自分達が未来の自分達を助けにくるところとかすごい興奮したよな?!」 進がめずらしくテンション高く話した。 少し頬を赤らめて興奮気味に話す姿が清瀬には可愛く見えた。 「なんか集中して見てたからお腹減ったな!清瀬はどう?」 「そうだね、とりあえずすぐそこのファミレスでも入ろっか?今なら空いてそうだし」 清瀬は映画館が入っているビルのすぐ近くにあるファミレスを指した。 二人は食事中も先ほど見た映画の感想を言い合った。 お腹が満たされ、映画の話も満足できるほど語り合ったところで清瀬は切り出した。 「進、そろそろ出ようか」 「ああ、そうだな」 進はテーブルの上に置いてあるスマホに目を向け時間を確認する。 「もう16時か。清瀬何か買いたいものとか見たいものある?」 「特にほしいものはないから大丈夫だよ。それより、あっちの方に行かない?」 清瀬は窓の外から見える景色を指した。 今いる繁華街から少し奥まった場所。 「・・・あっ」 進が息を飲むのがわかった。 しかし清瀬は躊躇わずテーブルの上に置かれた進の掌に自分の手を重ねて言った。 「ね、行こう?」 一瞬、進の瞳に影が浮かぶ。 しかし、進は清瀬に重ねられた掌をキュッと握って言った。 「・・わかった、行こう」 清瀬は進が見せた戸惑いは見ないふりをした。

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