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暗雲たちこめる(2)

 意外とあっさりしてたな。もっとギャーギャー言ってくるかと思ったのに。  車に積もった雪を下ろし、タイヤにチェーンをはかせながら、アヤは先程のリョウとの会話を思い出していた。  リョウはそんなにショックでもなかったのか?  ここまで気にしてたのは実は俺だけ?  車を走らせてからもそんなことばかり考えていた。  ホテルに着くとやはり館内は異様な雰囲気だった。社員不在での緊急事態に、出勤出来た数少ないスタッフはプチパニックに陥っていた。 「副支配人!」  ようやく助けが来たことに気づいた遭難者のように、アルバイトスタッフたちが安堵の表情を見せた。  そこからはリョウのことを考える余裕もなく、仕事に追われた。  新幹線の運転再開が夕方、支配人がホテルに到着したのは夜九時を過ぎていた。また今も降ってきた、と忌々しそうに言っている。  支配人に促され、その日初めての休憩をとることになったアヤは、外に出てみた。  大嫌いな雪が降っている。まだうっすら地面に残ったまま、またその上から新しい雪が積もろうとしている。この調子だと明日の朝も積もるかもしれない。  リョウが見たら喜んだかな。  一緒に、見たかったな。  真っ黒な空からちらちらと降ってくる大嫌いな雪が、ほんの少しだけ綺麗なものに思えた。

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