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れおは

「れおは?」  僕のたった三文字の質問に対して、レオはとても丁寧に答えてくれた。僕はそれを聞いているだけで楽しい。会話しているのが楽しい。  僕、会話してる。 「この雪だるまはルカが作ったの?」  椿に隠れている雪だるまを指差して彼が言う。 「そうだよ」  僕はそう書いて、その隣の三段の雪だるまを指差した。 「これ? これは俺が作った。マミコがうるさかったから逃げた。そしてここに来た。雪だるまを見つけた。孤独でかわいそうだったから、俺が隣にこれを作った」  マミコというのは鳥口のことである。レオはさらっと言っていたけど、今の言葉、鳥口が聞いたら随分ショックなんじゃないだろうか。知らないけど。 「今朝ここに来たら隣にこれがいた。雪だるまは分かる。故郷にもある。でもこれは知らない。これはなに?」 「ゆきうさぎ」 「雪うさぎ、うさぎか……。可愛い。ルカに似ている」 「にてない」 「そうかな? この赤はなに?」  レオは雪うさぎの隣の赤い花びらを手袋越しに摘まんで持ち上げる。 「つばき」 「ツバキ?」 「はなのなまえ」  僕はその後椿の植木に咲いている花弁を指差した。  レオは感嘆の小さな声を漏らしながら赤い椿の花を見ている。 「ふゆにさく はな」 「綺麗だ」  僕は同意の意味を込めて頷いた。僕も椿は好きだ。 「確かに椿は綺麗だったけど……」  手に刺激があったので何事かと思ったら、レオが僕の両手を包み込むように握り込んでいた。ペンの代わりにしていた雪玉がぽとりと落ちる。 「椿に顔を近づけていたルカが綺麗だった」  手袋越しなのに手が一瞬にして熱くなる。握る手がとても強い。 「一目見て恋に落ちてしまった。ルカが好きだ」 ……なんかやっぱり、彼がいると騒がしい朝だな。  

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