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僕の魔法はいつ解けますか

 僕はペンを執る。  レポート用紙をめくった。 『レオへ  お手紙ありがとう。しかも三通も。大切にします。すごく嬉しいです。  君のように綺麗な便箋と封筒があればよかったのだけど、君の手紙を読んでいたらすぐに返事を書きたくなりました。だからレポート用紙に書いています。お赦しください。  僕はここ三日君を避けるために高校を欠席したわけではありません。風邪を引いてずっと眠っていました。熱もありました。  だから君のことを嫌いになったわけではないのです。  レオ、僕のほうこそ君に会えなかった三日間、君に嫌われていないかずっと不安でした。正直僕は君を騒がしいヤツだと思っています。だけどそれは君を嫌う理由にはなり得ません。  僕の配役についてですが、僕はなんでもいいです。君の好きにしてください。ただ喋れないのでそこだけ考慮していただければと思います。マミコが僕の代わりを務めることも、君が納得するのならばそれで構いません。  僕は一人が好きなのかと君は聞きましたね。  結論から言えば、僕は一人が好きかもしれません。一人は気楽でいいです。喋らなくていいからです。喋れないのに喋らなくていいからという理由は釈然としないかもしれません。上手く言えないけれど、僕は喋れないから僕の世界だけで完結する一人が好きなのです。最初から一人だったらきっと寂しいなんて思わないでしょう。だから始めから諦めているのです。期待するから寂しくなるのです。そうでしょう? 僕は最初から一人だと思えば、一人なりに楽しさを見出せるものなのです。  だけどレオと一緒の方がずっと楽しかった。楽しいし幸せだなと思いました。声がない僕のためにひらがなを覚えてくれてありがとう。手紙も、文字も、書いてくれてありがとう。漢字もカタカナも使ってくれてありがとう。この間急に逃げ出してごめんなさい。君の優しさが優しすぎて、僕は自分がもどかしくなってしまったのです。  僕はレオと口と口で話がしたい。いつか。いつかじゃなくて今すぐにでも。  君と話がしたいです。  僕の魔法はいつ解けますか。  どうやったら解けるのでしょうか。君の魔法はどうやって解けたのですか。  レオ。ありがとう。僕は君の好きがすごく嬉しい、嬉しいし悲しい。  僕が声を持っていたら、こんなまどろっこしいことせずに済んだでしょう。もっと簡単だったはずです。僕も君も、こんなにやきもきしなかったかもしれません。  君さえよければ、僕はずっと君といたいです。  僕もレオが好きです。  大好きです。  また改めて、ちゃんと手紙を書きます。  ルカより  追伸 今度連絡先を教えてください。』

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