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信じたい
一息で書き終えた後、僕の額にはなぜか汗が滲んでいて、心臓がばくばくしていた。反対に指先は凍えるように冷たいにも関わらずあまりそれを感じない。ろくに読み返すこともできないままで、レポート用紙から切り取ってレオの手紙が入っていたフィルムに入れた。風で飛ばないように雪だるまの下にそれを置く。
ハッと我に返った時、朝のHRにはだいぶ余裕がある時間だった。内容を頭の中で反芻したら、レオには難しい文章もいくつかあったかも知れないけれど、読み返したら破って捨てそうだと思ったのでやめた。
僕は立ち上がって教室に向かうことにした。二歩歩いて振り返り、やっぱり手紙なんて書くのやめようと踵を返す。雪だるまの下の丹精こめたレポート用紙に手を伸ばして、でもこれは僕の本当の気持ちだからと手を引っ込め、また歩き出しては止まり、ちょっといっ時のテンションに身を任せているかもしれないなんて思い返して花壇に戻り、でもレオの気持ちに応えたいと手を引っ込め、を何度か繰り返して、僕は身を切るような思いで校舎裏を後にした。
レオに会った時、どんな態度をとればいいのかわからない。
自分の気持ちをこんなにシンプルで直球な言葉で文字にしたことは初めてで、感じたことのない気持ちになっている。
あの時間帯に校舎裏に彼が現れなかったということは、今朝彼は真っ直ぐに自分の教室に向かったようだった。
あそこで会えれば、直接渡してもう後戻りできないことになっていたのにな。
あれを読んだらどんな反応をするだろう。引かれるかな。
それでもいい。
どんな僕でも好きだと書いてくれた彼の気持ちを信じたい。
レオ、変わらずに僕を抱きしめてくれるかな。別に楽しみになんてしてないけどね。
上履きを履いて階段を登り教室を目指した。三日も高校を休んだ僕に声をかける人はいない。僕などいてもいなくてもまるで関係ないのだ。それで別に構わない。
まだ心臓が少しドキドキしている。小さなため息をついた。暖かい室内のせいで急にかゆくなった頬をかきながらふと目前を見たら、レオが立っていた。
「……ルカ」
僕は目を見開く。
おはよう、とはにかむ彼の横を風のように駆け抜けた。
真っ赤な顔を見られてやしないだろうか。耳まで熱い。
早く彼があの手紙に気づいてくれるといいな。
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