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浅見くん
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その後音沙汰もなく昼を過ぎ、五限目と六限目は劇の練習だ。隣のクラスと合同だから嫌でもレオと顔を付き合わせることになる。いつも昼休みは息を止めて過ごしているけど、今日はなおさら緊張した。
今になって腐ったみかんを食べた時のような後味の悪さを感じている。なんか結構恥ずかしいことを書いている気もした。冷静になると歯が浮くような言葉ばかりを並べ立てたような気がしないでもない。
座っていることももどかしくなったし、半分自棄になってとりあえず校舎裏に行くことにした。手紙がまだあるかないかを確かめよう。話はそれからだ。それによって彼への接し方が変わる。多分。
なんかもう恥ずかしい。
胃がぐるぐるして手で押さえながら歩いていたら、ちょっと、という声がした。僕はそれが聞こえたものの当たり前のように通り過ぎた。聞こえる言葉の中で僕に向けられた言葉など無い。レオの声を除けば。
そうだと思ったんだけど。
「ちょっと、浅見くん」
ちなみに浅見という名字は少なくとも同じ学年に僕しかいないので、ほぼ間違いなく僕に向けられた言葉だと頭では理解した。でも反射が伴わなかった。疑問を抱きながら二、三歩あるいたら今度は肩を掴まれた。
「浅見くん!」
体が驚いた猫のように飛び跳ねる。同じ動きで振り向いたら、そこには鳥口が立っていた。鳥口はなんの予備動作もなしに僕と距離を詰める。僕も反射で彼女と距離を置いた。それが続いて、僕は廊下の窓にぶつかった。
「体調はもういいの?」
なんで鳥口にそんなこと言わなきゃ無いんだろ、と思いながらもこくりと渋々頷いた。
「早速本題に入って悪いんだけど、姫役は私が代わりにやるってことでいいかな。もうそれで話が進んでいるの」
レオがそれでいいって言うならいいよ、と伝える手段がないのでなんとも言えずに俯いていたら、鳥口が口を開いた。
「レオくんもそれでいいって言っていたよ」
僕は目を見開く。鳥口の目が細まった。なんか嫌な感じだった。
怪訝に思いながらも頷くことしかできない。レオがそれでいいと言うのなら僕はそれでいい。その気持ちに偽りはない。
「浅見くんって、レオくんのことが嫌いなの?」
唐突な質問に僕は言葉を失った。最初から失ってるけどさ。
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